教員から転職を考えている人に知ってほしいこと【難易度や事例】

この記事の監修者

教育転職ドットコム 田中
代表取締役
詳しく見る京都市出身。学生時代から教員の道を志すも教育実習で課題感を感じ、まずはビジネス経験を積もうと総合コンサルティングファームのABeamConsultingに入社。その後、学んだ後に求められる力を採用の領域で体感したいと株式会社リクルートに転職。人事採用領域とまなび(教育)領域で12年間、法人営業および営業責任者として従事し、まなび事業部では年間最優秀マネジャーとして表彰。その後、海外教育ベンチャーの取締役などを経て株式会社コトブックを創業。コンサルタント兼プロジェクトマネージャーとして大手学習塾やブランド大学など教育系企業のプロジェクトを多数担い、担当した案件の全てを当初計画予定以上の成功に導く。京都精華大学 非常勤講師(キャリア科目)。
「教員から転職したいけど、スキルもないし将来が不安…」と感じていませんか?
この記事では、そんなあなたの悩みを「強み」に変える方法を徹底解説。
教員だからこそ輝ける意外な転職先から、後悔しないための具体的な準備まで、あなたの新しい一歩を完全にサポートします。
教員からの転職が難しいと言われる原因
教員からの転職が一般的な会社に勤めている人より難しいと言われることがあります。それは、教員ならではのいくつかの理由があるからです。
どうしてそういわれるのか?実際そうなのか?を解説していきます。
現在の学校教員の転職状況について
文部科学省の学校教員統計調査によると、公立学校教員の転職による離職者数は年々増加しています。
ではどうして、教員からの転職は難しいといわれているのでしょうか?
◾︎公立学校教員の転職者数
公立小学校(人) | 公立中学校(人) | 公立高校(人) | |
平成24年度 | 1318 | 1019 | 445 |
平成27年度 | 1501 | 1142 | 454 |
平成30年度 | 1715 | 1217 | 559 |
令和3年度 | 2098 | 1288 | 651 |
参考:文部科学省/令和4年度学校教員統計調査
https://www.mext.go.jp/content/20240321-mxt_chousa01-000030586_1.pdf
ビジネススキルが身についていないと思われる
学校現場で身につくのは高いコミュニケーション力や生徒対応力です。
一方で転職の際は、学校は利益を追求しない組織であるため、企業で必要なテクニカルスキルが不足していると思われがちです。特にITスキルや事務スキルが求められる場面で不安視されることがあります。
しかし、生徒の理解度に応じて説明の仕方を変え理解を促すようなヒューマンスキルや、授業の年間計画を作りカリキュラムを組むなどの、全体を俯瞰して捉えるコンセプチュアルスキルは教員だからこその強みです。
これらを活かしながら必要なスキルを補うことで、ビジネスの現場でも十分に活躍できます。
待遇が下がることがある
こちらのグラフは令和6年度の中学校教員年収(厚生労働省)と、令和5年の民間の平均年収(国税庁)を年代別で比較したものです。
対象年度や調査方法が異なるため一概に比べることはできませんが、中学校教員の年収は高水準であり、公務員であるため年金制度による保障や景気変動の影響を受けにくい安定性があると言えます。
とはいえ民間では年収に大きく振れ幅があり、20代の内に転職をすることでより好条件の企業に転職できる可能性が高まります。さらに教員としてのスキルを活かせば、業務量の多さや残業代が出ないといったデメリットを克服しながら、条件のいい職業に就くことも可能です。
参考:厚生労働省 https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/180
国税庁 令和5年分民間給与実態統計調査
転職するタイミングが限られる
学校教員は通常の授業に加え、テスト、学校行事、部活動など多忙な業務を抱えており、転職準備の時間を確保することが簡単ではありません。
また、教員は授業の都合で3月に離職することが多く、年度途中での転職が難しく、転職先は4月入社の求人に限られる傾向があります。
転職を考える場合、早めに情報収集や準備を進めることが重要です。
まとめ:教員からの転職は有利に働く場合もある
教員として働きながらの転職活動はハードですが、自分に合った職場を見つけることで収入や労働環境を改善できます。
「教員の経験が評価されないのでは」と不安になる方もいますが、経験を活かせる業界は多くあります。
転職活動を始める前に、自分の強みや希望条件を整理しましょう。
教員の経験や免許を活かせる仕事
教員からの転職の難しさは見てきましたが、もちろん教員としての経験や免許を活かせる職業もあります。そんな仕事をいくつか紹介していきます。
塾や予備校の講師
塾や予備校の講師は、学校教員として培ったスキルをそのまま活かせる職業です。
学校との最大の違いは、塾では「成績の向上」が最も重視される点にあります。
そのため、合格実績などの成果重視で厳しさもありますが、努力次第で高収入も期待できます。
業務内容 | 授業、授業準備、生徒の進路指導、マネジメントなど |
活かせるスキル | 授業構成力、傾聴力、コミュニケーション能力など |
転職難易度 | ★☆☆ |
民間企業の営業職
営業職は、教員とは全く異なる仕事に感じるかもしれませんが、実は教員としての経験やスキルを活かせる職種のひとつです。
たとえば、生徒との日々のやりとりで培ったコミュニケーション力や傾聴力、授業で身につけたプレゼンテーション力は、営業の現場でも役立つことが多いです。
教員時代よりも収入が増えるケースも少なくありません。
業務内容 | 顧客リストの作成、アポイント取得、商談など |
活かせるスキル | コミュニケーション能力、傾聴力、プレゼン力 |
転職難易度 | ★★☆ |
教育関連企業
教育関連企業では、生徒と直接関わる形ではないものの、教員としての知見を活かした仕事ができる分野です。教育現場のリアルを知っていることが大きな強みとなります。
職場の種類例 | 教材作成、教育テクノロジー(EdTech)、教育人材サービスなど |
活かせるスキル | 教員として培った知見など |
転職難易度 | ★★☆ |
児童発達支援
児童発達支援は、小学校入学前の子どもや障害をもつ子どもを対象に、日常生活における基本的な指導などを行う障害福祉サービスです。
コミュニケーション能力や観察力が不可欠であり、子どもへの対応に慣れている点は、大きな強みとなります。
業務内容 | 日常生活での基本的動作・知識技能の指導、集団行動への適応訓練 |
活かせるスキル | コミュニケーション能力、観察力、個別対応力、知見など |
転職難易度 | ★☆☆ |
市役所職員などの公務員
安定した職を希望する場合、市役所職員は有力な選択肢の一つです。実際に、多くの教員が目指すキャリアパスでもあります。
採用試験には「一般枠」と「社会人経験者枠」の2種類があり、自治体の採用試験に合格する必要があります。
- 一般枠:多くの自治体で年齢制限があり、上限はおおむね30歳まで。
- 社会人経験者枠:教員として4年以上の実務経験があれば受験可能。30歳以上でも受験できるものの、募集人数が少ない傾向がある。
業務内容 | 窓口対応、書類作成、電話対応など |
活かせるスキル | 書類作成力、コミュニケーション能力など |
転職難易度 | ★★☆ |
企業の研修講師
企業の研修講師とは、社員のスキル向上や意識改革を目的とした「研修」を実施する職業です。企業内の担当者として行う場合と、外部の専門業者として行う場合があります。
教員としての「教える力」をそのまま活かすことができる職種です。
業務内容 | 講義の企画、実施、評価 |
活かせるスキル | 授業構成力、傾聴力、ファシリテーション能力など |
転職難易度 | ★★★ |
教員から転職しても後悔しない?〜民間や公務員の働き方の違い〜
教員からの転職は、まったく異なる環境へと踏み出すことになるため、思い切りが求められます。
「転職しなければよかった」と後悔してしまうのではないかと、不安を抱える方も多いのではないでしょうか。ここでは、そんな不安を軽減するために、教員と他職種との働き方の違いに焦点を当ててご紹介します。
塾講師との働き方の違い
塾講師は、午後から夜にかけて勤務することが多く、この点は、昼間の勤務が中心となる教員とは大きく異なります。また、学校が休みである土日や長期休暇の時期にも授業が入りやすいという特徴があります。
一方で、部活動などの授業以外の業務が少なく、授業やその準備に集中できる時間が確保しやすい傾向にあります。さらに、イメージに反して残業が少ない場合も多く、働き方がよりシンプルになるというメリットもあります。
民間企業との働き方の違い
民間企業では自身の業務の価値が数値で可視化され、他者と比較されることが多くあります。
そのため、成果を求められるプレッシャーは、教員よりも強くなる場合があります。しかし、実績が評価されやすい実力主義の側面もあり、自分の努力次第では高年収も狙えます。
また、勤務時間や残業時間の上限が明確に定められていることが多く、労働環境が改善されてるケースも少なくありません。
市役所など、公務員との働き方の違い
市役所での業務は、福祉・財務・環境など幅広い分野にわたりますが、住民対応という点では教員の仕事と共通する面もあります。また、労働環境は、市役所勤務のほうが良いとされるケースが多いです。
市役所では勤務時間は原則8時30分から17時15分まで(休憩1時間含む)と定められており、過度な残業が発生しにくい体制が整っています。
また、精神的負担の面でも、市役所業務は明確なマニュアルに基づいて対応する体制が整っており、クレームやトラブル対応も組織として行うことが多いため、個人に過度な責任が集中しにくいのが特徴です。
まとめ:転職後に後悔する人は少ない
もちろん、企業や市役所の労働環境は、教員とは大きく異なる部分もあります。しかし、多くの職種の勤務条件は、教員として働くうえで感じやすい負担を軽減できるものとなっており、転職後の満足度が高い傾向にあります。
教員としての働き方に辛さや限界を感じている方にとって転職は、働き方を見直し、生活の質を向上させる有力な選択肢となり得ます。
転職を成功させる具体的な方法
ここまで、教員からの転職に伴う難しさや具体的な転職先の例についてご紹介してきました。最後に、教員から異業種へ転職するにあたって、ぜひ知っておいていただきたい重要なポイントをご紹介します。

自己分析をし、今後のキャリア像を明確にする
転職を成功させるためには、まず「自分がやりたいこと」と「自分に向いていること」を明確にする自己分析が欠かせません。
教員から転職を考える理由には、人間関係の悩み、長時間労働、休暇の取りづらさなど、さまざまな要因があるでしょう。まずは、そうした転職理由を整理したうえで、今後どのような働き方を大切にしたいのかを見極めることが重要です。
このプロセスを通じて、自分の描くキャリア像に近づくことができ、転職後に後悔するリスクを軽減できます。たとえビジネス経験が乏しくても、自分の強みや価値観を明確にしておくことで、自信を持ってアピールできるようになります。
その際に重要になるのが、教員経験を民間企業で評価されるスキルへと「翻訳」する作業です。例えば「クラス運営を工夫した」という経験も、「目標達成のために自ら課題を設定し、解決策を実行した」という主体性を示す例として捉え直すことで、ご自身の市場価値を客観的に理解できます。
志望動機の深掘りをする
キャリアの方向性が定まったら、次に取り組むべきは志望動機の深掘りです。
選考プロセスにおいては「なぜその企業を志望するのか」が重要視されます。企業研究を行い、自分がどのようにその企業に貢献できるかを具体的に伝えることで、説得力のある志望動機となり、好印象を与えることができます。
また、「なぜ教員という安定した職を辞めてまで転職を決意したのか」と問われることも多いため、単に労働環境への不満といったネガティブな理由だけでなく、自身の価値観や成長意欲、将来のビジョンなどポジティブな面もあわせて語ることが重要です。
一方で、目指す業界によってアピールの仕方は異なります。
企業の面接では前述した論理的な強みが重視される一方、塾の面接では教育への純粋な「思い」や「情熱」、原体験となる先生との印象的な出来事といった、人間性も深く問われます。
資格やスキルの取得に励む
希望する職種が明確になったら、その職種で求められる資格やスキルの取得に取り組むことで、採用の可能性を高めることができます。
- 簿記
- MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)
- ITパスポート
などの資格は、教員が一般企業で不足しがちなビジネススキルを補うものとして有効です。これらを取得しておくことで、企業からの印象が大きく変わる可能性もあります。
さらに、マーケティングやビジネス実務検定など、特定の職種に直結する専門資格を取得することで、転職後により良いポジションにつける可能性も高まります。
転職エージェントに相談する
教員として多忙な日々を送りながら、一人で理想のキャリアを考え、それに合った職業を探し出すのは容易ではありません。そんなときは、転職エージェントを活用することがオススメです。
非公開求人など自力では得にくい情報を得られるだけでなく、効率的に転職活動を進めることが可能です。
特に教育業界に精通した転職エージェントであれば、業界特有の事情や最新の求人動向にも詳しく、これまでの経験や希望に応じて、より有利な転職へと導くサポートをしてくれます。
まとめ:適切な準備が転職を成功させる鍵!
教員から異業種への転職は、求められるスキルや働く環境が大きく異なるため、入念な自己分析や業界研究が不可欠です。場合によっては、必要な資格取得も視野に入れる必要があるでしょう。
また、「ビジネススキルが不足しているのではないか」「柔軟性に欠けるのでは」「指示待ち傾向が強いのでは」といった教員に対するネガティブな先入観もありますが、しっかりと準備を行うことで、そうした懸念を払拭することは十分可能です。
一歩踏み出す勇気と、綿密な準備が、理想の転職を実現する第一歩となります。
転職するか迷っている方は、ぜひ一度プロにご相談ください。
転職すべきか迷っている方も多いのではないでしょうか。忙しい教員の仕事と両立して転職活動を進めるのは大変ですし、「転職して後悔しないか」という不安もあるかと思います。
そんなときは、転職のプロに相談するのが効果的です。
「教育転職ドットコム」は教育業界に特化した転職エージェントで、教員から他業界への転職支援にも実績があります。自分に向いている職種や実際の転職事例など、一人では分からない情報も丁寧にサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。
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教育転職ドットコム 田中
代表取締役
詳しく見る京都市出身。学生時代から教員の道を志すも教育実習で課題感を感じ、まずはビジネス経験を積もうと総合コンサルティングファームのABeamConsultingに入社。その後、学んだ後に求められる力を採用の領域で体感したいと株式会社リクルートに転職。人事採用領域とまなび(教育)領域で12年間、法人営業および営業責任者として従事し、まなび事業部では年間最優秀マネジャーとして表彰。その後、海外教育ベンチャーの取締役などを経て株式会社コトブックを創業。コンサルタント兼プロジェクトマネージャーとして大手学習塾やブランド大学など教育系企業のプロジェクトを多数担い、担当した案件の全てを当初計画予定以上の成功に導く。京都精華大学 非常勤講師(キャリア科目)。