教員は副業できる?ルールを守って始める方法とおすすめ副業

この記事の監修者
教育転職ドットコム 田中
代表取締役
詳しく見る教員の道を志すもまずはビジネス経験を積もうとコンサルティングファームに入社の後、リクルートに転職。人事採用領域と教育領域で12年間、法人営業および営業責任者として従事し、年間最優秀マネジャーとして表彰。退職後、海外教育ベンチャーの取締役などを経て株式会社コトブックを創業。大手学習塾や私立大学など教育系企業のコンサルティングなど教育領域に関する知見を活かし、教育領域の転職支援を行う傍ら、京都精華大学キャリア科目の非常勤講師も務める。
「教員だけど、収入を増やしたい」「自分のスキルをもっと活かせる場所はないか」
そう考えたとき、頭に浮かぶのが「副業」ですよね。しかし、教員という職業は、公務員(公立学校)や学校法人職員(私立学校)という立場上、「副業は禁止されているのでは?」という不安や疑問がつきまといます。
特に公立学校の先生は、地方公務員法によって原則として副業が制限されています。
では、副業は本当に一切できないのでしょうか?
結論から言うと、原則禁止ですが、法律や学校のルールに従って正式な許可を得れば、例外的に認められるケースはあります。
この記事では、公立・私立・非常勤といった立場ごとに、教員が副業を始めるための「合法的なルート」と「具体的な手順」を、法令や一次情報(文部科学省など)を根拠に分かりやすく解説します。
教員は副業できる?法律と原則を理解しよう

教員の副業については、あなたの所属する学校が「公立」か「私立」か、また「常勤」か「非常勤」かによって、適用される法律や規則が大きく異なります。
まずは、あなたがどの立場に該当し、どのようなルールが適用されるのかを正しく理解しましょう。
公立教員と地方公務員法の関係
公立学校の教員(小・中・高校など)は、「地方公務員」にあたります。そのため、副業に関する規定は「地方公務員法」に基づきます。
| 法律の条文 | 原則と例外 |
|---|---|
| 地方公務員法 第38条 | 職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。 |
この条文により、公立教員は「営利企業への従事」や「自ら営利企業を営むこと」が原則として禁止されています。
これは、教員に課せられた次の3つの責務を守るためです。
| 職務専念の義務 | 公務に専念し、職務をおろそかにしないこと |
| 信用失墜行為の禁止 | 公務員としての信用を損なう行為をしないこと |
| 守秘義務 | 職務上知り得た秘密を漏らさないこと |
私立・非常勤教員の場合
公立教員とは異なり、私立学校の教員や非常勤講師の場合は、適用されるルールが異なります。
| 立場 | 適用される制限の原則 | 確認すべき具体的なルール | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 私立学校の教員 | 地方公務員法による制限はなし | 学校法人ごとの「就業規則」 | 就業規則に副業に関する規定が定められているのが一般的です。 |
| 非常勤講師 | 常勤教員と比較して裁量が広い傾向 | 公立の場合:許可をとれば基本的に可能 私立の場合:就業規則による | 地方公務員法第38条でも、非常勤職員はその限りでないと明記されています。 |
例外として認められるケース
公立教員であっても、地方公務員法第38条にある通り、「任命権者の許可」を得ることで、例外的に副業(兼業)が認められる場合があります。
文部科学省の資料等に基づくと、許可が得やすい活動の方向性としては、「公益性が高い」、または「本業に支障をきたさない」と判断されるものです。
| 認められやすい活動の例 | 詳細 |
|---|---|
| 教育・福祉・地域貢献 | 地域の子どもを対象とした学習指導(地域塾・学習支援)、講演活動、特定のNPO活動、地域のスポーツクラブ指導など。 |
| 不動産・資産運用 | 規模の小さい不動産賃貸(例:アパート経営など)、株式投資など。ただし、大規模なものは許可が必要です。 |
【重要】 例外的に認められるかどうかは、最終的に任命権者(都道府県の教育委員会など)の総合的な判断となります。
ボランティアと報酬付き副業の違い
副業の線引きでよく問題になるのが、「報酬の有無」です。
| 活動の分類 | 報酬の有無 | 許可申請の要否(公立教員の場合) | 条件・留意点 |
|---|---|---|---|
| 無報酬の活動(ボランティア) | 無報酬 | 許可申請が不要なケースが多い | 公益性が高く、本業に支障がないと判断される場合。 |
| 報酬付きの活動(副業・兼業) | 報酬が発生 | 原則として許可申請が必要 | 報酬が少額であっても、原則として申請が必要です。 |
たとえ地域貢献活動であっても、継続的に報酬が発生する場合は「営利活動」と見なされる可能性があります。「報酬が発生するか否か」を明確な線引きとして覚えておきましょう。
副業が認められる代表的な事例と条件

教員の副業として学校法人や教育委員会からの許可が下りやすい、代表的な事例とその条件を見ていきましょう。あなたのスキルを活かしつつ、職務専念義務を遵守できる副業を見つけるヒントになります。
教育関連(家庭教師・講師・教材制作)
教員としての専門知識や指導経験をダイレクトに活かせる分野です。
| 副業の例 | 内容・条件 |
|---|---|
| 家庭教師・個別指導 | 非常勤講師や私立学校の教員の方に人気の高い副業です。 教師として培ってきた指導力やコミュニケーション力を、ダイレクトに活かせる点が大きな魅力です。 近年では、オンライン家庭教師やオンライン個別指導の需要も急増しています。自宅で授業を行えるため、移動時間が不要で、スキマ時間を有効に使える点も人気の理由のひとつです。 また、授業は平日の夜や土日に行われることが多く、本業である教員の仕事と両立しやすいというメリットもあります。 |
| 外部講師・講演活動 | 教育現場での経験をもとに行う講演活動やセミナー登壇は、社会的意義が高いとされます。 公立の教員の場合でも、教育関連の事業として認められやすいため、他の副業に比べて許可が得やすいケースが多いのが特徴です。 |
| 教材制作・教育ライター | 教育分野に関する書籍の執筆は、副業として認められるケースが比較的多い仕事です。 実際に、公立学校で勤務しながら教育関連の著書を出版している教員もおり、申請が通りやすい傾向があります。 執筆を行う場合、職務上知り得た情報や機密を利用しないという点に注意しましょう。 |
地域・社会貢献型(NPO・講演など)
公益性が高いと認められやすく、許可が下りやすい傾向にあります。
| 副業の例 | 許可を得るための条件・留意点 |
|---|---|
| NPO・地域団体での活動 | 公立の教員の場合であっても、非営利団体での社会貢献活動(その活動が教育・福祉・文化など、公益に資するもの)の場合、許可がおりやすいです。 |
| スポーツクラブの指導 | ボランティアとして無償で指導する場合は副業の許可申請は不要です。 一方で、地域のスポーツクラブや、スポーツ少年団、プロチーム、大学、同窓会などで報酬を得ながら指導する場合は、申請を行えば許可が下りるケースが多く、人気の副業のひとつとなっています。 |
キャリアアドバイザーからのコメント
「非常勤講師の方や私立の学校で働かれている方で、年収UPやスキルUPのために副業の検討をしている方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。
先生方の持つ『指導力』『計画力』『コミュニケーション能力』といったスキルは、副業市場においても非常に価値が高く、様々な副業案件で求められることが多いです。
特に、稼働時間が土日や夜になる塾での副業や、オンラインで隙間時間にできる副業などは、本業に支障が出にくく、スキルを活かしやすい分野です。
教育業界に精通したキャリアアドバイザーが、副業案件のご紹介から面接対策まで丁寧にサポートいたします。安心して一歩を踏み出せるよう、まずはお気軽にご相談ください。」
副業を始める前に必要な手続きと注意点
「原則禁止、例外あり」というルールの中で、合法的に副業を始めるためには、必ず正式な手続きを踏む必要があります。
ここを怠ると、最悪の場合、懲戒処分の対象となるリスクがあります。
勤務校への事前確認、申請を必ず実施
公立・私立を問わず、報酬が発生する副業(兼業)を始める場合は、必ず事前に勤務校(または教育委員会)へ相談し、許可申請を行う必要があります。
無許可で副業を始めるのは、リスクが高く最も避けるべき行為です。
| 立場 | 申請先・承認者 | 必要となる手続き |
|---|---|---|
| 公立教員 | 所轄の教育委員会 | 「兼業許可申請書」の提出 |
| 私立教員 | 校長や理事長など | 学校法人の定める手続きに従い、承認を得る |
許可申請書の書き方と記載例
| 記載すべき重要事項 | 許可を得るためのポイント |
|---|---|
| 業務内容 | 公益性や教育的意義を明確に記載する。また実態と異なる内容の記載にならないよう、正しく記載をする。 |
| 勤務時間 | 具体的な曜日・時間帯を記載。「本業の勤務時間外」であることを明確にし、本業に支障がないことを示す。 |
| 報酬額 | 正確な金額、または報酬体系を記載。 |
| 場所・期間 | どこで、いつからいつまで行うかを明記。 |
【補足】
申請書のフォーマットは学校や自治体によって大きく異なります。まずは学校内で「副業(兼業)の手引き」や申請書の見本を確認しましょう。
違反にはリスクが
無許可で報酬が発生する活動を行った場合、それは地方公務員法や就業規則に違反する行為となります。
| リスクの種類 | 詳細 |
|---|---|
| 懲戒処分の対象 | 最悪の場合、減給・停職・免職といった懲戒処分の対象となり得ます。 |
| 匿名副業の危険性 | インターネット上での匿名での副業であっても、税務や情報漏洩などから発覚する可能性は十分にあります。「バレないだろう」という安易な考えは危険です。 |
労働時間・健康管理・税務の留意点
副業を行う上で、自己管理として留意すべき重要なポイントです。
| 留意点 | 詳細 |
|---|---|
| 労働時間通算 | 公立教員の場合、副業も含む勤務時間管理が求められます。 過労や職務専念義務違反にならないよう、週の合計労働時間を意識しましょう。 |
| 確定申告 | 副業による所得が年間20万円を超える場合、確定申告が必要です。 超えない場合でも、住民税の申告は必要です。 |
| 信用の維持 | 副業の内容や取り組み方によっては、生徒や保護者、同僚からの印象が変化し、教員としての信頼や専門職としての評価に影響を及ぼす可能性があります。 副業が本業に悪影響をもたらさないように、周囲の人への影響も含めて慎重に対応しましょう。 |
副業OKな教員におすすめの副業ジャンルと始め方
許可を得て副業を行う教員におすすめのジャンルと、それぞれの始め方をご紹介します。本業のスキルを活かし、かつ許可が得やすいものを選ぶのが賢明です。
家庭教師・オンライン指導
最も教員スキルを活かしやすい王道ジャンルです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メリット | 指導経験がそのまま価値になる。オンラインであれば移動時間ゼロで効率的。 |
| 始め方 | ・副業人材を採用している塾に応募する ・「地域貢献」や「学習支援」を掲げるNPOや団体の活動に参加する |
教材開発・採点・教育ライター
在宅で完結でき、「勤務時間外の活動」として許可取得しやすいスキル型の副業です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メリット | 在宅で自分のペースで働ける。本業の教材研究にも繋がる可能性がある。 |
| 始め方 | ・副業マッチングサイトに登録する ・副業人材を採用している企業に応募する |
教育関連NPO・地域講座支援
公益性が高く、自治体の承認を得やすい可能性がある分野です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メリット | 本業の理念と合致しやすく、社会貢献度が高い。申請時に公益性を強調しやすい。 |
| 始め方 | 地域で活動する「不登校支援」や「地域の子ども食堂」などと連携し、学習支援ボランティアとして関わる |
非教育系で教員が選ぶ副業例
教員として培ったスキル(計画性、文章力、コミュニケーション能力など)を教育業界以外で活かすという方法もあります。
| 副業の例 | 教員の活かせるスキル |
|---|---|
| 翻訳・校正 | 語学力、高い文章読解力、正確性 |
| Webデザイン | 情報をわかりやすく生理する力、視覚的な表現力 |
| 資格試験の講師 | 指導力、専門知識 |
まとめ:まずはルールの確認から!
教員が副業できるかどうかは、雇用形態や勤務先が公立なのか私立なのかによって変わってきます。
ルールを正しく理解し、正式な手続きを踏むことで、あなたのスキルを副業という方法で活かし、年収UPやスキルUPに繋げることができる可能性があります。
曖昧な情報に惑わされず、ルールを守って活動を始めることが、あなたの未来のキャリアを守る一番の投資です。
この記事の監修者
教育転職ドットコム 田中
代表取締役
詳しく見る教員の道を志すもまずはビジネス経験を積もうとコンサルティングファームに入社の後、リクルートに転職。人事採用領域と教育領域で12年間、法人営業および営業責任者として従事し、年間最優秀マネジャーとして表彰。退職後、海外教育ベンチャーの取締役などを経て株式会社コトブックを創業。大手学習塾や私立大学など教育系企業のコンサルティングなど教育領域に関する知見を活かし、教育領域の転職支援を行う傍ら、京都精華大学キャリア科目の非常勤講師も務める。