塾講師の労働時間、ルール違反かも?働き方を見直す完全ガイド

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教育転職ドットコム 吉田

教育転職ドットコム 吉田

キャリアアドバイザー

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新卒で会計コンサルティングファームに入社し内部統制構築支援や決算早期化支援プロジェクト等に携わった後、リクルートへ転職。教育領域で大学を中心とした高等教育機関の募集戦略の策定やマーケティング支援に携わる。その後学習塾を立ち上げ、創業2か月で単月黒字を達成。学習塾運営のみならず、高校大学受験のための進路指導講演会、高校入試問題の作成等、「教育」分野へ広範にわたって関わり、2022年株式会社コトブックへ参画。

「授業準備や保護者対応で、残業時間が大変なことに…これって当たり前なの?」「サービス残業が常態化していて、心身ともに疲れてきた…」

もしあなたが今、そんな疑問を抱き、心身ともに疲弊しているなら、この記事であなたの働き方を見直してみましょう。

塾業界には、授業時間以外に「隠れ労働」と呼ばれる業務が多く、残業が常態化してしまっている企業もあります。

この記事の目次

こんなお悩みありませんか?

  • 労働時間を改善するために転職を検討したい
  • 転職したいけど、何から始めればいいか知りたい
  • 塾講師経験が活かせるホワイト企業の求人が知りたい

教育業界専門の
キャリアアドバイザーが担当

塾業界の労働時間、これが実態と平均

塾業界の労働時間、これが実態と平均

令和六年度 月間実労働時間及び出勤日数

総労働時間所定外労働時間出勤日数
産業別平均162.2時間13.5時間19.4日
教育、学習支援業159.7時間16.3時間19.1日

(参照:厚生労働省 毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報)

上記のデータを見ると、総労働時間や出勤日数は産業別平均と大きく変わりませんが、教育、学習支援業の残業時間は、産業全体の平均より2.8時間も長くなっています。 

多くの企業では残業時間を適切にカウントする仕組みが整ってきていますが、中小企業や個人経営の塾などでは、まだ正しく管理されていないケースも見受けられます。

たとえば次のような業務は、勤務時間として扱われないことがあります。

  • 授業準備: 授業内容の考案、教材作成、予習
  • 教科研究: 指導内容の検討、資料収集
  • 生徒・保護者対応: 電話・メール対応
  • 事務作業: 採点、成績処理、日報作成、教室の清掃
  • 販促活動: ポスティング
  • 会議・研修: 授業後や休日に実施される会議、研修

これらは「教育業界だから」「塾業界に多い」といった業界全体の問題というよりも、各企業の管理体制や意識の差によるところが大きいのが実情です。

みなし残業制度の落とし穴

多くの塾で採用されているのが、「みなし残業制度(固定残業代制)」です。

これは、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた残業時間分の手当を固定で支払う仕組みです。

例えば「みなし残業月30時間」と定められている場合、実際の残業時間が30時間未満でも30時間分の残業代が支払われます。

一方で残業時間が30時間を超えた場合は、本来その超過分を別途支払う必要がありますが、適切にカウントされず支払われないケースもあると指摘されています。

あなたの働き方、法律の基準に沿っているかセルフチェック

その働き方、法律の基準に沿っている?

自分の働き方が法律に違反していないか、客観的にチェックしてみましょう。

項目労働基準法の基準あなたの働き方
労働時間原則として1日8時間、週40時間まで1日の実労働時間は?
休憩時間6時間超8時間以下で45分、8時間超で1時間以上休憩を合計何分取れていますか?
休日原則として週1日以上、または4週を通じて4日以上週に何日休んでいますか?
時間外労働月45時間、年360時間以内(36協定を締結している場合)毎月何時間残業していますか?

休憩時間は適切に取れているか

労働基準法では、労働時間が6時間を超えると45分以上、8時間を超えると1時間以上の休憩を途中で与える必要があります。

休憩中は給料は発生しませんが、その時間は完全に自由に過ごせることが前提です。もし、「休憩時間がない」「休憩中も電話対応を頼まれる」「生徒対応をさせられる」といったことが常態化している場合、それは本来の休憩時間とは認められません。

もし、このような状況に置かれているなら、それは労働時間としてカウントされるべきです。

固定残業代は正しく計算されているか

塾で多く採用されているみなし残業制度ですが、固定残業代(いわゆるみなし残業代)は、給与明細に「◯時間分の残業を含む」といった形で記載されていることが多いです。

たとえば「固定残業30時間分」と設定されている場合、実際に残業が30時間未満なら問題はありません。けれども、30時間を超えて働いた分については、別途残業代が支払われる必要があります

もし「超えた分が支払われていない」「そもそも固定残業代がいくら・何時間分なのか明示されていない」といった場合は、労働基準法に違反している可能性があります。給与明細を一度チェックしてみましょう。

休日出勤と代休のルール

塾では、模試の監督や保護者面談などで休日出勤を求められることも少なくありません。

法律では、休日に働いた場合は「代休を与える」か「割増賃金を支払う」ことが義務づけられています

本来は労働者の同意があって初めて休日出勤が成立するものです。もし「強制的に休日出勤させられているのに、代休も割増賃金もない」という状況があれば、それは法律違反にあたる可能性があります。

時間外労働の上限規制とは

2019年から、時間外労働の上限が法律で定められました。

  • 原則:月45時間まで、年360時間まで
  • 特別条項付き36協定を締結している場合でも:
    • 年720時間以内
    • 複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
    • 単月100時間未満(休日労働を含む)

時間外労働の規制の前提となる「法定労働時間」は1日8時間・週40時間です。

これを超える場合が「時間外労働」となり、36協定を締結しない限り原則としてさせてはなりません。

「毎月80時間以上残業している気がする…」「休日出勤を含めると100時間を超えてしまっている…」

もしそんな働き方になっているなら、それは法律で定められた限度を超えている可能性があります。

働き方が改善されない環境にずっと身を置くことは、心身の負担にもつながります。

「このままでいいのかな?」と感じたときは、転職やキャリアチェンジを前向きに考えることも、自分を守る大切な選択肢のひとつです。

労働時間を証明するために。今すぐやるべきこと

違法なサービス残業の是正を求めるには、具体的な証拠が必要になります。

勤怠記録を毎日正確につける

会社のタイムカードや勤怠管理システムに頼るだけでなく、自分自身で正確な労働時間を記録しておきましょう。

記録すべき項目記録例
出勤時刻9:00
退勤時刻23:00
休憩時間12:00〜12:45(45分)
実労働時間13時間15分

スマホのアプリや手帳に記録するだけでも良いでしょう。

業務内容を詳細に記録する

いつ、どのような業務を行ったかを詳細に記録しておくと、後々の証拠として役立ちます。

例:

  • 15:00-16:00: 授業準備(高校1年生 数学Ⅰ 教材作成)
  • 16:00-17:00: 生徒面談(Aさん 進路相談)
  • 17:00-22:00: 授業(Bクラス、Cクラス)
  • 22:00-23:00: 保護者対応(Dさん 電話)

労働基準監督署への相談も検討。

労働基準監督署は、労働基準法に基づき、企業の監督指導を行う公的機関です。

相談の準備記録した勤怠データ、業務記録、給与明細、雇用契約書などを揃える。
相談労働基準監督署の窓口で、現状を詳細に説明する。
調査・指導労働基準監督署が会社に立ち入り調査を行い、違法行為があれば是正指導を行う。

相談は無料です。匿名での相談も可能ですので、まずは気軽に相談してみることをおすすめします。

「環境を変える」選択も

環境を変える選択もあり

「会社に改善を求めても、変わる気がしない…」と感じるなら、転職という選択肢も視野に入れてみてはいかがでしょうか。

健全な労働環境の企業とは

転職活動をする際は、次のポイントをチェックして、健全な労働環境の企業を見つけましょう。

健全な企業のチェックポイント具体的な内容
労働時間管理勤怠管理システムが導入されており、残業時間が厳しくチェックされている
残業代固定残業代を超えた分は、きちんと支給される
有給休暇取得率が高い、または取得を奨励している
評価制度労働時間ではなく、成果やプロセスが公平に評価される
社員の定着率離職率が低い

転職で叶えるワークライフバランス

「塾講師の仕事は好きだけど、この働き方はもう限界」と思っているなら、転職で働き方を変えることができます。

ホワイトな塾へ転職・大手など、労働時間管理が徹底されている塾
・ITツールを積極的に導入し、業務効率化を進めている塾
・給与が仕事内容や仕事量と見合ってる塾
異業界にキャリアチェンジ・朝〜夕が中心の、生活リズムが整いやすい業界
・コミュニケーション力や指導経験を活かせる教育関連、人材、営業職など

転職を通じて、これまで犠牲にしてきた 自分の時間・家族との時間 を取り戻すことができます。

「転職なんて大げさかな」と思うかもしれませんが、まずは求人を調べてみたり、キャリアの専門家に相談してみることから始めてみましょう。

元塾講師の転職成功事例

実際に、長時間労働に苦しんでいた塾講師が、転職でワークライフバランスを取り戻した成功事例をご紹介します。

Aさんのプロフィール最終学歴: 大卒
転職時の年齢: 25歳
前職: 集団塾の講師(地域密着型小規模塾)
転職後: 大手塾(上場企業)

転職の経緯

地域密着型の小規模塾で英語と国語の講師をしていたBさん。授業が終わってから事務作業や次の日の授業準備をするため、毎日終電帰りでした。

さらに、「自己研究は自分でやるもの」「成長したいなら自分の時間を削って当然」といった雰囲気や上からの圧力もあり、休日も教科研究に追われる日々。

もちろん休日出勤として扱われることもなく、働いた時間はカウントされませんでした。

「このままでは体力が持たない」と感じたBさんは、より労働環境が改善された塾への転職を決意しました。

転職成功のポイント

Bさんが転職したのは、労働時間管理が徹底されている大手学習塾でした。この塾では、働き方を守るための仕組みがしっかり整っています。

  • 夜の残業は原則禁止。13時より前に出社すれば必ず残業としてカウントされます。
  • 22時になるとパソコンが自動シャットダウン。強制的に退勤せざるを得ない仕組みです。
  • 有給は積極的に取得推奨。上司が管理し、消化できるようチームで調整しています。
  • 業務量のチェック体制があり、無理があればすぐに分担を見直してくれます。
  • 休日出勤はほぼゼロ。やむを得ず出た場合でも、必ず代休が取れるよう徹底されています。

結果

残業がほぼなくなったことで生活が劇的に変化しました。年収は前職とほぼ変わらなかったものの、時間的・精神的な余裕が大幅にアップ。趣味の時間や家族との時間も確保できるようになり、ワークライフバランスの取れた働き方を実現しました。

専門のキャリアアドバイザーに相談

転職を成功させるには、教育業界に精通したキャリアアドバイザーに相談するのが効果的です。

非公開求人の紹介一般には公開されていない、優良な非公開求人を紹介してもらえる可能性があります。
業界・職種の情報提供     あなたの教員経験が活かせる業界や職種に関する深い情報や、最新の市場トレンドを提供してくれます。
応募書類の添削・面接対策履歴書や職務経歴書の添削、模擬面接などを通じて、あなたの魅力を最大限に引き出すサポートをしてくれます。
企業との橋渡しあなたの強みを企業に伝え、企業との間に入って年収交渉や入社時期の調整などを行ってくれます。
第三者視点でのアドバイス客観的な視点から、あなたのキャリアプランや転職活動の進め方について具体的なアドバイスを提供してくれます。

まとめ

塾講師の仕事はやりがいがありますが、労働環境が原因で心身ともに疲弊してしまう人も少なくありません。

まずは、自分の労働時間を客観的に記録し、必要であれば会社に改善を求める、あるいは転職という選択肢を検討してみてください。

この記事の監修者

教育転職ドットコム 吉田

教育転職ドットコム 吉田

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新卒で会計コンサルティングファームに入社し内部統制構築支援や決算早期化支援プロジェクト等に携わった後、リクルートへ転職。教育領域で大学を中心とした高等教育機関の募集戦略の策定やマーケティング支援に携わる。その後学習塾を立ち上げ、創業2か月で単月黒字を達成。学習塾運営のみならず、高校大学受験のための進路指導講演会、高校入試問題の作成等、「教育」分野へ広範にわたって関わり、2022年株式会社コトブックへ参画。

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