塾講師の年収が低いのはなぜ?給与UPと転職のコツ

この記事の監修者
教育転職ドットコム 吉田
キャリアアドバイザー
詳しく見る新卒で会計コンサルティングファームに入社し内部統制構築支援や決算早期化支援プロジェクト等に携わった後、リクルートへ転職。教育領域で大学を中心とした高等教育機関の募集戦略の策定やマーケティング支援に携わる。その後学習塾を立ち上げ、創業2か月で単月黒字を達成。学習塾運営のみならず、高校大学受験のための進路指導講演会、高校入試問題の作成等、「教育」分野へ広範にわたって関わり、2022年株式会社コトブックへ参画。
「生徒の成長は嬉しいけれど、給与が見合わない気がする」
そんな想いを抱える塾講師の方は少なくありません。
教育への情熱がある一方で、収入面の現実に悩む人も多いでしょう。
この記事では、塾講師の給与水準や働き方の背景をデータで解説し、
あなたの経験を活かせるキャリアの可能性を紹介します。
塾講師のリアルな年収事情と生活の実態
まずは、塾講師が置かれている客観的な状況をデータで見ていきましょう。あなたの悩みが個人的なものではなく、業界全体が抱える課題であることがわかるはずです。
平均年収は約438万円
国税庁の「令和6年 民間給与実態統計調査」によれば、日本全体の平均年収は約487万円です。一方、厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)」が示す教育・学習支援業、いわゆる塾業界の平均年収は約438万円とされています。
数値だけを見ると全体平均をやや下回りますが、これはあくまで統計上の平均値に過ぎません。
実際には、教室長やマネージャー職への昇進、専門科目での指導力向上、あるいはオンライン教育など新たなフィールドへの挑戦によって、年収を大きく伸ばすケースも少なくありません。教育の現場で得た経験を生かせば、平均を超える働き方を十分に実現できます。
(参照:https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2024/pdf/R06_001.pdf
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/396 )
大手と個人塾での違い
一般的に、塾の規模と年収は比例する傾向にあります。
| 塾の規模 | 年収の傾向 | 特徴 |
|---|---|---|
| 大手学習塾 | 比較的高め | 昇給制度や福利厚生が整っている企業が多く、安定した給与体系が魅力。ただし、成果主義の要素もあり、校舎の業績や生徒数によって収入が変動することも。 |
| 個人経営の塾 | 大手より低い傾向 | 経営者の方針に左右されやすく、地域密着型でアットホームな雰囲気が特徴。一方で、昇給や福利厚生の制度は限定的な場合も。 |
「大手だから安定している」「個人塾だから低収入」と一概には言えませんが、給与体系の安定性やキャリアパスの明確さという点では、やはり大手塾の方が優位と言えるでしょう。
一方で、個人塾には自由度の高さや地域密着のやりがいといった魅力もあります。
自分の働き方や価値観に合った職場を選ぶことが大切です。
他業種との年収比較で見える現実
では、他業種のビジネスパーソンと比較するとどうでしょうか。
システムエンジニア(Webサービス開発)、ITコンサルタント、食品営業(食品メーカー)、塾講師で平均年収を比較してみました。

塾講師の給与は平均的に見るとやや低めの傾向がありますが、これはあくまで統計上の数値です。
一方で、ライフプラン(結婚・子育て・住宅購入など)を見据えると、今後のキャリアをより戦略的に考える材料となるデータともいえます。
教育現場での経験や指導力を軸に、教室運営やマネジメント職、教育サービス企業への転身など、キャリアの選択肢を広げることで、この差を埋めていくことは十分に可能です。
(参照:https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/314
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/362
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/527
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/396 )
塾講師を取り巻く環境
「一生懸命に働いているのに、なぜ評価が上がりにくいのか」。その理由は、個人の努力不足ではなく、業界全体のビジネスモデルや収益構造も一因かもしれません。
塾業界のビジネスモデルと収益構造
塾の主な収入源は、シンプルに言えば「生徒数 × 授業料」。
この仕組みには、給与が上がりにくい構造的な課題が潜んでいます。
- 労働集約型ビジネス
講師一人が担当できる生徒数には限界があります。 - 単価設定の上限
教育費の相場を考慮すると、授業料を大きく引き上げることは難しく、売上には一定の上限があります。
その結果、講師個人の努力が必ずしも給与や待遇に反映されにくい構造となっているのです。
少子化と多様化する教育ニーズ
近年は、少子化による生徒数の減少が進んでおり、塾業界全体の競争が激化しています。
一方で、教育へのニーズは多様化し、以下のような新しい分野が拡大しています。
- 個別指導
- オンライン授業
- プログラミング教室
- 探究学習
こうした新しいニーズに応えるための投資は増えるものの、それが直接的に講師の給与アップに繋がりにくいのが現状です。
授業だけじゃない。講師に求められる多様な役割
塾講師の仕事は、授業をすることだけではありません。
- 授業準備(予習、教材作成)
- 生徒からの質問対応
- 進路相談、学習カウンセリング
- 保護者対応(面談、電話連絡)
- テスト作成、採点
- 季節講習の営業
- 校舎の清掃、事務作業
こうした変化に対応するため、各社は新しい教材やICTツールへの投資を進めています。ただし、これらの投資がすぐに収益へと結びつくわけではなく、講師の給与アップに直結しにくい現状も残っています。
生徒に合わせる働き方と業界の労働慣行
塾講師の勤務時間は、生徒が学校を終えてから通塾する関係で、夕方から夜にかけてが中心になります。
そのため、一般的なオフィスワークとは異なり、勤務時間や休日のリズムが不規則になりやすい傾向があります。
| 時間や時期 | 働き方の特徴 |
|---|---|
| 勤務時間(例) | 平日:14時〜22時前後 土日:模試・保護者面談などの行事が入る場合も |
| 休日の傾向 | 平日休みが中心で、友人や家族と予定を合わせづらいことも |
| 繁忙期 | 夏期講習・冬期講習などの長期休暇中は、通常よりも勤務時間が長くなるケースも |
ただし、すべての塾がこの働き方に当てはまるわけではありません。
近年では、ITツールの導入や業務分担の明確化により、勤務時間を適正化する取り組みを進めている企業も増えています。
こうした業界特有の労働習慣を理解したうえで、自身の生活リズムやキャリアプランに合った職場を選ぶことが大切です。
あなたの市場価値は?塾講師経験で培われるポータブルスキル
「塾講師の経験なんて、他の業界では活かせないのでは?」
そう考える方も少なくありません。
しかし実際には、教育現場で培ったスキルはあらゆる職種で求められる“汎用的な力”です。
目標達成に導く「計画・実行能力」
塾講師は、生徒一人ひとりの目標(志望校合格や成績向上)を実現するため、逆算思考で年間・月間・週単位の学習計画を立てて実行します。
主なスキル要素:
- 現状分析力:生徒の学力や課題を的確に把握する。
- 課題解決力:限られた期間で成果を出すための最適なアプローチを設計する。
- 実行マネジメント力:計画の進捗を管理し、改善を繰り返しながら成果を最大化する。
このような能力は、営業職・企画職・マーケティング職など、目標管理が求められる多くの職種で高く評価されます。
つまり、講師経験で培った「PDCAを自走できる力」は、どの業界でも通用する実践的な能力です。
生徒・保護者を動かす「対人折衝・コミュニケーション能力」
塾講師は、生徒・保護者双方と信頼関係を築きながら成果を導く職業です。
その中で自然と、人の心を動かす力や状況に応じた対応力が磨かれていきます。
主なスキル要素:
- プレゼンテーション力:難しい内容をわかりやすく伝える。
- ファシリテーション力:生徒面談や保護者会での対話を通して相手の理解を深める。
- ヒアリング力:相手の本音やニーズを引き出し、最適な提案へとつなげる。
これらのスキルは、営業・コンサルティング・カスタマーサクセスなど、
「人を支援し、成果を出す」職種において非常に高い汎用性を持っています。
経験を強みに変える自己分析のコツ
自分の強みを言語化する第一歩は、「何をしてきたか」を具体的に整理することです。
以下のフレームワーク(STAR法)を使うと、経験を客観的に分析しやすくなります。
| 要素 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| S(Situation)状況 | どんな環境・立場で取り組んだのか | 中学3年生の担当クラスで、数学の平均点が学年平均を下回っていた。 |
| T(Task)課題 | どんな目標や課題に直面していたのか | 苦手分野の把握とクラス学習意欲の向上を課題に設定。 |
| A(Action)行動 | その課題に対してどのように行動したか | 小テストやオリジナルプリントを活用し、理解度を個別に把握。 |
| R(Result)成果 | その結果、どんな成果・変化があったか | 平均点が18点アップし、クラス全体の雰囲気も前向きに変化。 |
このように、エピソードを具体的な行動と言葉で示すことで、あなたのスキルや再現性が伝わりやすくなります。
プロが見る「塾講師」ならではの強みとは
キャリアアドバイザーや採用担当者の多くが評価するのは、
塾講師が持つ「課題発見力」と「成果創出力」です。
- 限られた時間内で成果を出す計画性・実行力
- 多様な生徒・保護者と信頼関係を築く対人対応力
- 結果を定量的に追うマネジメント意識
特にこれらは営業・人事・教育企画など、他業界でも高く評価されるビジネススキルです。
つまり、「塾講師」という職種で培った力は、教育に限らず幅広い業界で通用する強みへと転化できるのです。
ホワイトな環境で、教育を続ける未来を描こう
「もっと安心して教育に関わりたい」
その想いは、“給与アップ”よりもずっと本質的なキャリアアップの出発点です。
【同業界】“ホワイト塾”への転職こそ、キャリアを長く続けるための最善策
塾講師として将来を見据えるなら、「給与額の多寡」だけでなく、安心して働き続けられる環境に注目することが大切です。
教育業界では近年、残業時間の適正化や休日制度の見直しが進み、“ホワイト塾”への転職を機に仕事の質と生活の質がともに向上したという声も増えています。
以下は、働きやすさと安定したキャリア形成を両立している企業の一例です。
| 企業名 | 年間休日 | 平均残業時間 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| コノセル | 117日 | 月10〜20時間 | 教室閉鎖方式で残業を抑制 |
| エデュマン | 125日 | 実質残業ほぼなし | 授業準備を分業化 |
| 成学社 | 123日 | 10〜20時間 | 教室運営サポート体制が充実 |
働く環境が整うことで、授業や生徒対応により集中できる時間が生まれ、成果を正当に評価してもらいやすくなります。
結果として、キャリア全体の安定性が増し、長期的には収入面でもプラスに働く可能性があります。
「ホワイト塾」への転職は、無理なくキャリアを育てるための現実的な一歩と言えるでしょう。
【異業種】教育経験を活かせる“第二のキャリア”という選択肢
「教育に関わる仕事を続けたいけれど、塾以外の環境にも関心がある」という方も少なくありません。
近年は、教育業界で培ったコミュニケーション力・説明力・課題解決力を評価する企業が増えており、異業種でもスムーズに活躍できるケースが見られます。
特に、教育の周辺領域である人材・IT・学習支援サービスなどは、塾講師の経験を活かしやすい分野です。
| 職種・業界 | 想定年収 | 特徴 |
|---|---|---|
| 大手人材紹介会社のキャリアアドバイザー | 460〜600万円 | 面談・キャリア提案に教育的対話力を活かせる |
| 大手オンライン学習サービスの高校営業 | 420〜510万円 | 教育現場への理解を活かし、学校提案を担当 |
| オンライン英会話の学習コンサルタント | 400〜550万円 | 学習者支援・進捗管理・提案型サポートを実施 |
| 専門学校の教務・学生サポート | 400〜550万円 | 生徒対応・進路支援などで講師経験を発揮 |
これらの職種は、指導経験を“教える”から“支える”方向に広げる働き方。
教育業界で培った人への関心やサポート意識をそのまま活かせるため、無理なく新しいステージに挑戦できる点が魅力です。
「30代からでも遅くない」転職成功者の声
Aさん:34歳・教室長 → 大手予備校運営職
転職前の課題
夜間勤務が多く、家族との時間を確保できない働き方に限界を感じていました。
仕事は充実していたものの、ライフスタイルとの両立が難しくなっていました。
転職で叶えたこと
勤務時間が日中中心の予備校運営職に転身。授業運営や講師育成を担当しながら、家庭との時間も確保できる働き方を実現しました。
「無理なく続けられる環境で、仕事も家庭も大切にできています。
後悔しないために。転職活動を始める前に知っておくべきこと
勢いで転職活動を始める前に、少し立ち止まって自分の軸を整理してみましょう。
- 「なぜ転職したいのか」を明確にする
年収アップ、働き方の改善、スキルアップ――目的が明確になるほど企業選びの精度も上がります。 - 自己分析を丁寧に行う
自分がどんな環境で力を発揮できるのか、「強み」と「価値観」を言語化しましょう。 - 情報収集を怠らない
企業の良い面だけでなく、口コミや働き方の実態も確認を。
転職エージェントなどの専門家に相談するのも有効です。
自分の経験を正しく評価してもらおう
塾講師という仕事は、間違いなく尊く、やりがいに満ちた仕事です。しかし、その情熱や努塾講師の仕事は、熱意と責任感を要する重要な仕事です。
しかし、その努力が十分に評価されていないと感じる人も少なくありません。
それは「甘え」や「わがまま」ではなく、あなたの市場価値を見直すサインです。
転職エージェントに相談し、専門家の視点から身のスキルや経験を整理することで、新しい選択肢や可能性が見えてくるはずです。
この記事の監修者
教育転職ドットコム 吉田
キャリアアドバイザー
詳しく見る新卒で会計コンサルティングファームに入社し内部統制構築支援や決算早期化支援プロジェクト等に携わった後、リクルートへ転職。教育領域で大学を中心とした高等教育機関の募集戦略の策定やマーケティング支援に携わる。その後学習塾を立ち上げ、創業2か月で単月黒字を達成。学習塾運営のみならず、高校大学受験のための進路指導講演会、高校入試問題の作成等、「教育」分野へ広範にわたって関わり、2022年株式会社コトブックへ参画。