塾講師に教員免許は必要?免許なしからの転職のコツも紹介

この記事の監修者
教育転職ドットコム 吉田
キャリアアドバイザー
詳しく見る新卒で会計コンサルティングファームに入社し内部統制構築支援や決算早期化支援プロジェクト等に携わった後、リクルートへ転職。教育領域で大学を中心とした高等教育機関の募集戦略の策定やマーケティング支援に携わる。その後学習塾を立ち上げ、創業2か月で単月黒字を達成。学習塾運営のみならず、高校大学受験のための進路指導講演会、高校入試問題の作成等、「教育」分野へ広範にわたって関わり、2022年株式会社コトブックへ参画。
「学校の先生になりたいわけじゃないけど、教育の仕事がしたい」
「教員免許は持っていないけど、塾講師に興味がある」 「教員免許を持っているけど、学校教育以外で活かせる場所を探したい」
塾講師への転職を考える中で、「教員免許」の有無について不安に感じていませんか?
結論からお伝えすると、塾講師として働く上で、教員免許は必須ではありません。
しかし、免許がなくても本当に大丈夫なのか、教員免許を持っている場合はどのように評価されるのか、知りたいことはたくさんあるはずです。
この記事では、塾講師への転職を検討している方に、教員免許の必要性の実態から、免許の有無別で内定を勝ち取るための具体的な秘訣、そしてあなたのキャリアパスまで、徹底的に解説します。
塾講師と教員免許の実態

塾講師への転職を考える際に、教員免許がないと不利になるのではないかと悩んでいる方はいませんか?
実際は全くそのようなことはないのでご安心ください。ここでは、塾業界における教員免許の立ち位置を見ていきましょう。
採用における免許の役割
前述のとおり、塾講師の採用において、教員免許は「必須」条件ではありません。
教員免許は、専門知識や指導経験を示すプラス評価の要素の一つではありますが、それだけで採用の可否が決まるわけではありません。
実際の選考では、書類選考よりも面接での人物評価を重視する塾が大半です。
そのため、教員免許を保有していると書類段階で目に留まりやすいものの、最終的な合否を左右するほどの差にはなりにくいのが実情です。
求人情報から見る必須条件
大手・中小問わず、多くの塾の求人情報を見ると、「教員免許必須」と記載されているケースはほぼありません。多くの塾が「未経験歓迎」の塾講師求人で必須条件として掲げているのは、主に次のような項目です。
| 必須条件としてよく見られる項目 | 補足 |
|---|---|
| 大卒以上 | ご自身が受験勉強をしてきたか(受験のことや受験生の気持ちなどをわかっているか)という点を重視。 大学に入学していれば中退していたとしてもOKとしている塾も多数あります。学部学科を問うことはほとんどありません。 |
| 基本的なPCスキル | 生徒の成績管理や報告書作成などで必要。高いレベルは要求されず、Word・Excel等の基本操作ができれば問題なし。 |
| コミュニケーション能力 | 生徒・保護者と信頼関係を築けるかが重視される。 対話力・傾聴姿勢が重要。 |
| 熱意 | 生徒に寄り添い、学習継続を支える姿勢が求められる。 |
| 理念への共感 | 教育方針や塾のスタンスに共感し、行動に反映できるか。 |
個別指導と集団指導の違い
塾の形態によって、教員免許の評価や指導内容の傾向が異なります。
| 塾の形態 | 教員免許の評価 | 指導内容の傾向 |
|---|---|---|
| 個別指導 | あまり重視されないことが多い。 「対話力」や「生徒一人ひとりに合わせた指導力」がより重要。 | 個別指導塾では、講師の多くを大学生アルバイトが担い、正社員は彼らのマネジメントや教室運営を担当するケースが一般的。 そのため指導力や教員免許の有無より、「店舗運営経験」「営業力」「マネジメント力」のほうが重視されがち。 |
| 集団指導 | あると評価されやすい。 専門教科の知識の深さや、クラス全体をまとめる力が求められるため。 | 入試対策など、より教科の体系的な知識の伝達。 |
法律上の必要性はない
学校教育法に基づき、学校の教員は教員免許状の取得が義務付けられています。しかし、学習塾は「学校教育」とは異なる「学校外教育」という位置づけです。
そのため、塾講師の採用に際して、法律上の教員免許の取得義務は一切ありません。採用はあくまで、各塾の経営方針や指導カリキュラムに基づき行われます。
教員免許があると有利になる4つの理由
「必須ではないなら、教員免許は意味がないの?」というと、決してそんなことはありません。
教員免許は、あなたの転職活動を強力に後押しする「プラスの評価ポイント」になります。ここでは、教員免許を持っていることで有利になる4つの理由を解説します。
1. 専門知識の証明になる
教員免許の取得過程では、大学での専門科目の履修や教育実習を通じて、単なる教科知識にとどまらない「体系的な教育の専門知識」を習得しています。
| 教科内容の専門知識 | 集団指導において、専門知識に基づいた質の高い授業を提供できる保証となります。 |
|---|---|
| 学習プログラム設計と教育課程の知識 | 各教科の目標から逆算し、最適なカリキュラムや年間指導計画を組み立てた経験があります。 これは、塾での個別指導計画の作成や教材選定など、教務運営の核となる業務に活かせます。 |
| 生徒理解・学習支援の本質的理解 | 「人がどのように学び、成長するか」という本質的な理解があります。 これは、生徒の能力を効果的に引き出す指導に活かせます。 |
2. 給与・待遇面で優遇されるケースも
ごく稀に教員免許保有者に対して、給与面で優遇措置を設ける塾もあります。
しかし、給与決定の基準は塾によって異なり、多くの塾では
- 前職の年収
- 面接での人物評価
- スキルや貢献可能性
といった要素を総合的に判断して、スタート年収を設定します。
そのため、教員免許を持っていることを面接で適切にアピールでき、最終評価が高ければ結果として給与面で優遇される可能性があります。
3. 応募できる求人の幅が広がる
塾の中には、例えば「教員免許保持者優遇」や、「教育業界経験者限定」といった、全くの未経験ではなくある程度の経験がある即戦力者限定の求人を出すケースがあります。
特に管理職候補としての採用では、教育現場での経験や教育に関する知識が重視される傾向にあります。
免許があることで、こうした専門性を前提としたポジションにも応募できる可能性が広がります。また、「教育の基本を理解している人材」として、書類選考通過のハードルが下がるケースもあります。
4. 保護者からの信頼を得やすくなることも
保護者目線で考えると、「教員免許を持っている先生」は、教育のプロフェッショナルというイメージがあり安心感につながります。
もちろん指導力や人間性こそが最も重要ですが、入塾面談や進路相談といった場面で、教員免許の有無が信頼度を後押しする可能性があります。
教員免許なしで内定を勝ち取る3つの秘訣

塾講師に転職する場合、教員免許がなくても内定を勝ち取っている人はたくさんいます。塾講師の採用において、免許以上に重視されるポイントを見極め、効果的にアピールすることが重要です。
1. 最も重視されるのは「指導力」
「未経験歓迎」の求人では、入社前の指導力そのものはほぼ問われません。一方で、即戦力採用を前提とした求人では、
- 教科への深い理解
- わかりやすく伝える力
- 飽きないように工夫しながら授業を展開する力
など、実践的な指導力が重視されます。
未経験の場合でも、選考では、「入社後の研修で指導スキルをどれだけ早く習得できるか(=キャッチアップ力・カルチャーフィット・ポテンシャル)」が評価のポイントとなります。
免許の有無にかかわらず、指導力をアピールする場合は例えば以下の点を具体的にアピールしましょう。
| アピールすべき「指導力」の要素 | 具体的なアピール例 |
|---|---|
| 論理的な説明能力 | 難しい内容を、具体例や図解を用いて小学生にもわかるように説明できる |
| 生徒への傾聴力・観察力 | 生徒の『わからない』原因を、質問の仕方や表情から見抜き、適切な声かけができる |
| 自己学習を促す力 | 単なる解法だけでなく、生徒が自力で考え、勉強する習慣を身につけさせる指導ができる |
2. 生徒・保護者との「対話力」
塾はサービス業の側面も持っています。生徒だけでなく、保護者とも信頼関係を築き、連携しながら教育を進める必要があります。
あなたが過去の経験で培ったコミュニケーション能力やホスピタリティを、教育の文脈でアピールしましょう。
- 顧客(保護者)のニーズを把握し、それに応える力
- 生徒の悩みや目標を傾聴し、励まし、目標設定をサポートする力
- 教育サービスに関する説明をわかりやすく行う力
これらは、営業職やサービス業など、異業種からの転職者にとっても大きな武器になります。
3. 未経験歓迎の求人を狙う
教員免許がない、かつ塾講師が未経験の場合は、「未経験者歓迎」と明確に記載されている求人を狙うのが内定への近道です。
「未経験歓迎」の塾は、充実した研修制度が整備されていることが多く、入社後に必要な知識やスキルを体系的に学べる環境が整っています。
採用側も「教育への熱意」や「ポテンシャル」を重視して選考を進めてくれるため、教員免許の有無に過度にこだわる必要がありません。
【状況別】あなたに合うキャリアパスは?
あなたの今の状況や持っている資格に応じて、最適なキャリアパスは異なります。ここでは、教員免許の有無に合わせたキャリア選択の方向性を見ていきましょう。
免許あり:専門性を活かす
教員免許を持っているあなたは、免許取得に向けて学んできた知識やスキルをもとに教育への専門性をアピールすることができます。
| キャリアパスの選択肢 | 向いている人 | アピールポイント |
|---|---|---|
| 講師(専任講師) | 教科指導の専門知識を活かして、授業のプロとして活躍したい人 | ・特定教科の深い知識 ・大学受験対策の力 ・授業設計能力 |
| 教育コンテンツ開発 | 予備校など、教材作成やカリキュラム設計に携わりたい人 | ・学習指導要領の知識 ・教科指導経験に基づく教材作成能力 |

免許なし:研修制度で学ぶ
教員免許がないあなたは、ポテンシャルと意欲、そして他業界で培ったスキルを武器に、未経験者向けの研修制度を活用しましょう。
| キャリアパスの選択肢 | 向いている人 | 活かせるスキル(異業種経験) |
|---|---|---|
| 未経験歓迎求人の塾講師 | ポテンシャルや熱意を重視して採用してもらえる未経験歓迎求人で、塾講師にキャリアチェンジしたい人 | ・現職や部活動などでの、後輩への指導の経験 ・保護者や生徒へのコミュニケーション力 |
| 教室運営職 / 教室長候補 | 教科指導だけでなく、教室運営やアルバイト講師のマネジメントなどにも興味がある人 | ・サービス業での対人スキル ・営業職での傾聴・提案力 ・目標達成へのコミットメント ・組織をマネジメントした経験 |
プロに相談しミスマッチを防ぐ
教育業界への転職活動をスムーズに進める上では、業界特化型のエージェントを活用することは非常に有効です。
「自分の経歴が、どの塾で一番評価されるのか分からない」 「教員免許がないけど、給与を下げずに転職したい」
このように迷っているなら、教育業界に詳しいキャリアアドバイザーに相談することをおすすめします。
| 非公開求人の紹介 | 一般には公開されていない、優良な非公開求人を紹介してもらえる可能性があります。 |
|---|---|
| 各社の特徴などの情報提供 | どのような特色がある企業か、どのような人材が求められているかなど、求人情報からではわからない情報を教えてもらうことができます。 |
| 応募書類の添削・面接対策 | 履歴書や職務経歴書の添削、模擬面接などを通じて、あなたの魅力を最大限に引き出すサポートをしてくれます。 |
| 企業との橋渡し | あなたの強みを企業に伝え、企業との間に入って年収交渉や入社時期の調整などを行ってくれます。 |
| 第三者視点でのアドバイス | 客観的な視点から、あなたのキャリアプランや転職活動の進め方について具体的なアドバイスを提供してくれます。 |
免許の有無より「教育への想い」が大切
この記事で解説した通り、塾講師という仕事に、教員免許は「必須ではない」けれど、「あると有利になる場合がある」というのが現実です。
しかし、最も忘れてはいけないのは、教員免許の有無にかかわらず、塾講師の仕事は「生徒の人生を左右する重要な仕事」あるということです。
採用側が最終的に見ているのは、免許や経歴といった「資格」だけではありません。
- 生徒の成長に貢献したいという熱意
- 教育という仕事に対する真摯な姿勢
- 自身のスキルアップを怠らない向上心
これら「教育への想い」こそが、塾講師としての成功を決め、内定を勝ち取る最大の武器になります。
どんな些細な疑問や悩みでも、ぜひ私たちにご相談ください。
信頼できるキャリアアドバイザーに相談することで、絡まった糸が解け、次のステップへの具体的な道筋が見えてくるでしょう。

この記事の監修者
教育転職ドットコム 吉田
キャリアアドバイザー
詳しく見る新卒で会計コンサルティングファームに入社し内部統制構築支援や決算早期化支援プロジェクト等に携わった後、リクルートへ転職。教育領域で大学を中心とした高等教育機関の募集戦略の策定やマーケティング支援に携わる。その後学習塾を立ち上げ、創業2か月で単月黒字を達成。学習塾運営のみならず、高校大学受験のための進路指導講演会、高校入試問題の作成等、「教育」分野へ広範にわたって関わり、2022年株式会社コトブックへ参画。
