塾講師の副業はOK?正社員でも安心して始める方法

この記事の監修者
教育転職ドットコム 田中
代表取締役
詳しく見る教員の道を志すもまずはビジネス経験を積もうとコンサルティングファームに入社の後、リクルートに転職。人事採用領域と教育領域で12年間、法人営業および営業責任者として従事し、年間最優秀マネジャーとして表彰。退職後、海外教育ベンチャーの取締役などを経て株式会社コトブックを創業。大手学習塾や私立大学など教育系企業のコンサルティングなど教育領域に関する知見を活かし、教育領域の転職支援を行う傍ら、京都精華大学キャリア科目の非常勤講師も務める。
「休みの日を活用して、あと月数万円を稼ぎたい」「スキルアップしたい」
もしあなたがそう考えているなら、副業を検討してみるのがおすすめです。
でも、こんな不安はありませんか?
- 「正社員でも副業は認められるの?」
- 「本業と両立できるか、体力が心配…」
- 「特に講習期は、本業に影響が出ないか不安」
この記事では、副業を検討しているあなたのために、「法的な可否」から「安心して始めるための具体的な方法」までを徹底解説します。
塾講師の副業は本当に可能?

結論から言うと、勤務先の就業規則や雇用契約の内容によって異なります。
国としては「副業・兼業を促進する」方向に進んでいますが、実際には会社(塾)ごとに方針が異なります。まずは就業規則をしっかり確認し、慎重に検討することが大切です。
副業を禁止する職場の特徴と禁止が認められるケース
塾講師が副業を行う場合、以下のような理由から制限を受けるケースがあります。
| 禁止・制限の理由 | 具体的な背景 |
|---|---|
| 競業避止 | 本業と同業他社(例:同地域・同業態の塾など)で働き、会社の正当な利益を害する(顧客・ノウハウの流出など)リスクがある場合。 |
| 職務専念義務 | 本業がおろそかになるほど副業に時間を割くことで、本業のパフォーマンスが低下するリスクがある場合。 |
| 長時間労働の防止 | 本業と副業の労働時間の合計が、過労死ラインや法定労働時間の上限を超え、労働者の健康を害するリスクがある場合。 |
| 機密保持 | 会社の企業秘密や個人情報などを漏洩するリスクがある場合。 |
これらのうち、特に「長時間労働の防止」と「競業避止」は、副業を検討する上で重要なポイントになります。
厚労省ガイドラインの確認方法:長時間労働と届出
厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表し、原則として副業・兼業を認めるべきとの姿勢を示しています。
ただし、副業を行う際には、「労働時間通算」と「事前の届出」という2つの重要なルールがあります。
1. 労働時間通算のルール
労働基準法では、労働時間は「本業と副業の合計」で判断されます。
- 原則:1週間で40時間、1日で8時間を超えて労働させてはならない。
- 残業の上限規制:時間外労働は、単月100時間未満、複数月平均80時間以内。
本業と副業の労働時間を合算した結果、この上限を超えると、労働基準法上のリスクが生じます。
企業側は、このリスクを避けるために副業を制限することがあります。
2. 事前の届出
多くの企業は、副業を認める代わりに「事前の届出」を義務付けています。
これは、会社が「長時間労働のリスク」や「競業のリスク」を確認し、あなたの健康と本業への支障がないかチェックするためのものです。
届け出の内容は通常、以下の通りです。
- 副業先の業務内容
- 副業先での労働時間(始業・終業時刻)
- 副業先での雇用形態
要点: 「就業規則」に届出規定がある場合は、必ず事前に届け出ましょう。 届出義務を怠って隠れて副業を始めると、規則違反で懲戒処分の対象になる可能性があります。
労働時間通算と法的リスク
副業を始める際、もっとも注意すべきは「割増賃金の支払い義務」です。
労働時間が法定時間(1日8時間、週40時間)を超えた場合、超過分の労働については割増賃金が発生します。そして、その割増賃金の支払い義務は、「時間的に後から労働契約を締結した使用者」、つまり多くの場合、副業先の塾に生じます。
しかし、本業の会社も労働者の健康管理の義務があります。そのため、両社の合計労働時間を把握し、適切な管理(労働時間通算や健康確保措置)を行うことが法的に求められています。
あなたが安心して副業を続けるためにも、本業と副業の労働時間管理を徹底し、無理のない範囲で働くことが何より重要です。
塾講師が選ぶべき副業スタイル

塾講師の副業として、おすすめのものを紹介します。
オンライン家庭教師の副業
オンライン家庭教師は、小・中・高校生を対象に、Zoomなどのオンラインツールを使って自宅から指導を行う仕事です。
従来の家庭教師は生徒の自宅まで訪問する必要があり、移動時間や交通費がかかるのが一般的でした。
しかしオンライン型では、移動の手間が一切なく、自宅にいながら授業ができるため、時間の有効活用やコストの削減が可能です。最近では、社会人や主婦などがスキマ時間を活かして在宅で指導する副業として始めるケースも増えています。
| メリット | デメリット/留意点 |
|---|---|
| ・これまでの経験を活かしやすい ・本業のスキルUPにつながる ・在宅勤務が可能 ・移動時間ゼロ ・シフトの自由度が高い ・全国の生徒を対象にできる。 | ・指導環境の整備(PC、ネット環境) ・生徒との信頼構築が対面より難しい場合がある。 |
対面指導・個別指導の副業
塾講師が別の塾で対面指導や個別指導の副業を行う場合は、特に慎重な確認が必要です。
勤務先が競合関係にあると、就業規則違反とみなされる可能性があり、多くの塾では競業にあたる副業は許可されません。
ただし、
- 指導対象が異なる(例:本業=中高生、副業=大学生・社会人)
- 教科や指導形態が異なる(例:本業=集団指導、副業=個別指導)
といった場合は、競業に該当しないと判断されるケースもあります。
| メリット | デメリット/留意点 |
|---|---|
| ・高時給になりやすい ・生徒の反応を直接見ながら指導できる ・運営ノウハウを間近で学べる ・現職のスキルアップにつながる | ・移動時間がかかる ・拘束時間が固定されがち ・労働時間の観点から本業との両立が難しい場合がある ・本業の競合にあたる場合許可がおりづらい |
教材作成・採点業務の在宅副業
塾講師の経験を活かせる副業として人気なのが、教材作成や採点業務です。在宅で完結するため、本業の合間に取り組みやすく、体力的な負担も少ないのが特徴です。
主な仕事内容は、学習教材やテスト問題の作成、模試や通信教育の答案採点など。企業や教育サービス会社から委託を受けて、在宅でコツコツと進める形が一般的です。
| メリット | デメリット/留意点 |
|---|---|
| ・ノウハウを活かしやすい ・完全に在宅で自分のペースで作業できる | ・時給に換算すると単価が低い場合がある ・納期や品質のプレッシャーがある |
記事ライティングの副業
塾講師の知識を活かして取り組みやすいのが、教育系メディアや受験情報サイトなどでの記事ライティングです。
学習法・受験対策・キャリア教育など、教育分野に特化した記事を執筆する仕事で、在宅で完結します。「教育現場のリアルな声」や「教える立場ならではの視点」を求めるメディアも多く、講師経験者は重宝される傾向にあります。
| メリット | デメリット/留意点 |
|---|---|
| ・ノウハウを活かしやすい ・完全に在宅で自分のペースで作業できる ・実績がポートフォリオになり、他の仕事に繋げやすい ・継続すれば安定収入も可能 | ・納期や品質のプレッシャーがある ・SEOやライティングスキルの習得が必要 ・未経験の場合文字単価が低い案件が多い |
自分に合う働き方の見つけ方
あなたのライフスタイルに合わせて、どの副業スタイルが向いているかチェックしてみましょう。
| ライフスタイル・重視点 | 最適な副業スタイル |
|---|---|
| 「移動時間をゼロにしたい」「すきま時間を活用したい」 | ・オンライン家庭教師 ・教材作成・採点業務 ・記事ライティング |
| 「効率よく稼ぎたい」「生徒と直接関わりたい」 | ・対面指導・個別指導 ・オンライン家庭教師 |
| 「副業を通して新しいスキルを身につけたい」 | ・記事ライティング |
| 「本業の労働時間が長め」「体力に自信がない」 | ・教材作成・採点業務 |
稼げる目安と時間管理のコツ
塾講師をしながらの副業は、体力と時間の管理が成功の鍵となります。
時給相場と月収目安
副業の報酬は、その内容やあなたの即戦力度合いによって大きく変動します。
ここでは一般的な相場をご紹介します。
| 指導形式 | 報酬相場(目安) |
|---|---|
| 個別指導 | 週1・2回程度〜 月2万円〜 |
| 集団指導 | 週1回程度 月4万円〜 |
| オンライン家庭教師 | 時給1,500円〜3000円 |
講習期のシフト設計
春期・夏期・冬期講習や、受験前・定期テスト前といった繁忙期には、本業の業務量が増えるため、副業のシフトやスケジュールを調整する必要が生じる可能性があります。
副業へ応募する際は、必ず契約前に本業が忙しくなる時期を伝え、「講習期や繁忙期のシフト調整や業務量削減が可能かどうか」を確認しましょう。
体力・睡眠・集中力の両立術
本業後の夜間勤務は、想像以上に体に負担がかかります。
| 両立術 | 具体的な実践例 |
|---|---|
| スキマ時間の活用 | ・移動時間や休憩時間に仮眠をとる ・記事ライティングなど勤務時間の自由度が高い副業の場合は、本業出勤前の朝の時間に行う。 |
| 本業との連携 | 本業の「残業が多い日」は副業を入れないなど、「無理をしない」を決めておく。 |
| ルーティン化 | 「帰宅後30分は休憩」「23時から副業スタート」など、時間割を決めて脳を慣れさせる。 |
収入記録・税金管理のポイント
副業で収入を得た場合、「年間20万円」が確定申告の要・不要を判断する目安になります。
| 副業所得の金額 | 確定申告の必要性(給与所得以外の場合) | 住民税の申告の必要性 |
|---|---|---|
| 年間20万円を超える場合 | 原則として必要 | 必要 |
| 年間20万円以下の場 | 不要 | 必要 |
確定申告を行う際は、副業分の住民税の納付方法を「普通徴収」に設定することで、本業の給与分とは別に自分で納付できます。
(※どの納付方法が適しているかは勤務先や自治体の方針によって異なります。)
初めから税理士に相談する必要はありませんが、「収入と経費」を記録する帳簿付けは、必ずスタート時から行うようにしましょう。
安心して副業を始める準備ステップ
副業をスムーズに、そして安心して続けるためには、事前の準備が欠かせません。
就業規則・契約書の確認項目
まず、本業の会社の就業規則や雇用契約から以下の点を必ず確認しましょう。
| 確認項目 | チェックポイント |
|---|---|
| 副業の可否 | 就業規則に「許可なく他の会社の業務に従事してはならない」などの禁止規定があるか? |
| 事前の届出義務 | 届出義務がある場合、所定の様式や提出期限は? |
| 競業避止の規定 | 本業と同業他社での副業が明示的に禁止されていないか? |
| 労働時間通算の取り扱い | 会社が副業の労働時間も把握し、健康管理の措置を講じるのか? |
就業規則が閲覧しにくい場合は、人事・労務担当部署に「副業に関するガイドライン」の有無を尋ねてみましょう。
副業届の書き方と提出例
副業届の様式は企業によって異なりますが、一般的に以下の情報を記載します。
| 記載項目 | 記載例(塾講師の場合) |
|---|---|
| 副業先の名称 | ○○個別指導塾(株式会社△△) |
| 所在地 | 東京都○○区… |
| 業務内容 | 小中学生向けの個別指導(英語・数学) |
| 労働時間 | 毎週火・木曜日 20:00〜22:00(休憩なし) |
| 雇用形態 | アルバイト・パート(雇用契約) / 業務委託契約 |
| 開始予定日 | 202X年X月X日 |
ポイントは「本業への影響がないこと」を明確に伝えること
- 「本業の勤務時間外のみで、残業のない日に限定する」
- 「本業と同業の競合には当たらない(例:指導対象が異なるなど)」
といった情報を添えると、承認されやすくなります。
健康・メンタル面のセルフ管理
副業を成功させるために、最も大切なのは「健康の維持」です。
本業と副業の合計労働時間が長くなると、知らず知らずのうちにストレスや疲労が蓄積します。
| 管理のコツ | 具体的な内容 |
|---|---|
| 労働時間の上限設定 | 法律上の上限(週40時間など)とは別に、「自分自身の限界」を決めましょう。「週に合計○時間まで」「副業は週3日以内」など、具体的な数字で設定します。 |
| 休息日の確保 | 週に1日は、「完全に仕事から離れる日」を設け、疲労回復に努めましょう。 |
初月から無理なく続ける計画
最初からフル稼働する必要はありません。
【計画の例】
| 期間 | 実施内容 | 目的・留意点 |
|---|---|---|
| 初月 | 週1回(2時間)に絞る。 | 体力と副業のペースに慣れることを最優先にする。 |
| 2〜3ヶ月目 | 週2回に増やして継続する。 | 無理なく続けられるか、体力や本業への影響をチェックする。 |
| 4ヶ月目以降 | 本業の繁忙期を意識しながら長期的なシフトを調整する。 | 繁忙期の負荷を見越した、持続可能な計画を立てる。 |
まとめ:ルールを守って副業を味方にする
塾講師が副業を始めることは、自身の教育経験や学習支援への熱意を活かし、収入を上積みできる素晴らしい選択肢です。
成功の鍵は、以下の3つのポイントを守ることです。
- 本業のルール厳守
- 自己管理の徹底
- ライフスタイルに合った選択
これらのルールを守り、賢く働くことで、副業はあなたのキャリアと人生を豊かにする強力な味方になります。
教育業界に特化したエージェントなら、あなたの不安を解消し、就業規則や体力面を考慮した最適な副業案件を無料でご提案できます。
まずは一度、あなたの希望を専門家にご相談ください。
この記事の監修者
教育転職ドットコム 田中
代表取締役
詳しく見る教員の道を志すもまずはビジネス経験を積もうとコンサルティングファームに入社の後、リクルートに転職。人事採用領域と教育領域で12年間、法人営業および営業責任者として従事し、年間最優秀マネジャーとして表彰。退職後、海外教育ベンチャーの取締役などを経て株式会社コトブックを創業。大手学習塾や私立大学など教育系企業のコンサルティングなど教育領域に関する知見を活かし、教育領域の転職支援を行う傍ら、京都精華大学キャリア科目の非常勤講師も務める。