教員はブラック、は本当?「しんどい」理由と自分を守る方法

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教育転職ドットコム 田中

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代表取締役

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教員の道を志すもまずはビジネス経験を積もうとコンサルティングファームに入社の後、リクルートに転職。人事採用領域と教育領域で12年間、法人営業および営業責任者として従事し、年間最優秀マネジャーとして表彰。退職後、海外教育ベンチャーの取締役などを経て株式会社コトブックを創業。大手学習塾や私立大学など教育系企業のコンサルティングなど教育領域に関する知見を活かし、教育領域の転職支援を行う傍ら、京都精華大学キャリア科目の非常勤講師も務める。

「朝早くから夜遅くまで働くのが当たり前」「家に帰っても持ち帰りの仕事がある」

そんな生活を続けていませんか?

心身ともに疲弊し、「もう限界かもしれない」と感じているかもしれません。

過酷な環境に身を置いているからこそ、そう感じるのは自然なことです。

この記事では、教員が「ブラック」と言われる客観的な理由をデータに基づいて解説するとともに、現状を打開するための具体的な選択肢と行動のヒントをお伝えします。

この記事の目次

こんなお悩みありませんか?

  • 教員からの転職におすすめの求人が知りたい
  • 教員としての今後のキャリアが不安
  • 現状に不満を抱える教員が取るべき行動が分からない

教育業界専門の
キャリアアドバイザーが担当

教員がブラックと言われる客観的根拠

教員の長時間労働は、国レベルの構造的な問題として認識されています。ここでは、教員の働き方の実態を、厚生労働省や文部科学省のデータ、そして関連法制度から客観的に見ていきましょう。

国の調査で見る平均残業時間

文部科学省の「教員勤務実態調査(2022年度)」速報値から、教員の長時間労働が浮き彫りになっています。

職種平日(1日あたり)の勤務時間外の労働時間(持ち帰り仕事を含む)
小学校教諭約3時間37分
中学校教諭約3時間48分
高校教諭約2時間50分
全教員平均約3時間25分

※参照:文部科学省「教員勤務実態調査」(2022年度)速報値。所定の勤務時間は7時間45分として算出。全教員平均は、小学校、中学校、高校の数値を単純平均したもの。

これは、勤務時間外に毎日3時間半前後ものサービス残業が発生していることを意味します。

この数字は、一般企業では考えられない水準です。教員の長時間労働が依然として深刻であることを示しています。

精神疾患による休職者数の推移

長時間労働による心身の疲弊は、精神疾患による休職者数の増加として表れており、その水準は他職種と比較しても深刻です。

令和5年度の文部科学省の「公立学校教職員の人事行政状況調査」では精神疾患で休職している教員の数は7,119名となり、過去最多となっています。

年度精神疾患で休職している教員の数
令和5年度7,119名
令和4年度6,539名
令和3年度5,897名

※参照:令和5年度 文部科学省「公立学校教職員の人事行政状況調査」

このデータからも、公立学校教職員の精神疾患による休職者数は直近3年連続で過去最多を更新しており、毎年約7,000人近い教員が、ストレスや過労によって現場を離れざるを得ない状況に追い込まれていることがわかります。

給特法が抱える構造的な問題

教員の長時間労働の背景には、1971年に制定された「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」が深く関わっています。

【給特法の主な問題点】

残業代が出ない構造               原則として時間外勤務手当・休日勤務手当を支給しない構造です。
月給の4%で打ち止め現状は給料月額の4%を「教職調整額」として支給する代替措置ですが、実態とかけ離れた金額です。(2025年には改正法が成立し、2026年からは教職調整額を毎年1%ずつ引き上げ、2031年に10%へと段階的に引き上げる方針が示されています。)
対象となる業務「自発的行為」とされる授業準備、教材研究、学校行事の準備など、多くの業務が含まれます。
時代遅れの構造1971年の制定当時と比べ、いじめ・不登校対応、GIGAスクール構想など、現代の業務の複雑化・激増に対応できていなません。

この法律が、教員に残業を「サービス」として強いる構造を作り上げており、現在の教員の過酷な労働環境の最大の原因の一つとなっています。

海外の教員との働き方の比較

日本の教員の働き方は、海外の先進国と比較しても極めて特殊です。以下はOECD(経済協力開発機構)が実施する国際教員指導環境調査(TALIS)の2024年データによるものです。

1. 週あたりの総仕事時間(中学校教員)

項目日本(中学校教員)国際平均(OECD)
一週間あたりの総仕事時間55.1時間41.0時間
順位参加国中 最長

※参照:OECD(経済協力開発機構)が実施する国際教員指導環境調査(TALIS)(2024年)

日本の教員は、国際平均よりも週に約14.1時間(一日あたり約2.82時間)も長く働いている計算になります。

2. 業務内容別の時間配分(中学校教員)

日本の教員の仕事時間(55.1時間)の内訳を、国際平均と比較すると、特に「授業以外の業務」に費やす時間が長いことがわかります。

業務内容日本(中学校教員)国際平均(OECD)
指導(授業)時間17.8時間22.7時間
一般的な事務業務5.2時間3.0時間
課外活動(部活動など)5.6時間1.7時間
学校運営業務3.1時間1.6時間
授業の計画・準備8.2時間7.4時間

※参照:OECD(経済協力開発機構)が実施する国際教員指導環境調査(TALIS)(2024年)

このように、海外では教員が「授業準備と生徒指導」に集中できる環境が整備されているのに対し、日本では教員が「何でも屋」として機能し、「事務業務」と「部活動指導」に膨大な時間が費やされている実態が浮き彫りになります。

「もう限界だ」と感じる瞬間

教員が限界を感じる瞬間

データで見ても過酷な教員の仕事ですが、実際に現場で働く先生方が「もう無理だ」と感じる瞬間は、どのような時でしょうか。

現職教員の方々が共通して抱える、精神的な消耗につながる具体的な瞬間をまとめました。

終わらないサービス残業と事務業務

教員は、授業準備や採点といった「本業」以外に、膨大な事務業務を抱えています。

サービス残業を生む主な業務疲弊の原因
学校運営に関わる雑務委員会活動、予算申請、備品管理など、授業と直接関係ない事務作業の量が多い
授業準備・教材作成時間内に終わらず、休憩時間や自宅に持ち帰って行うことが常態化
テストの採点・成績処理期末や学期末に集中し、徹夜での作業が発生しやすい
会議・打ち合わせ長時間かつ非効率なものが多く、持ち帰りの仕事が増える原因に

特に、事務業務のための時間(時間外手当)が正当に評価されないことが、先生方のモチベーションを低下させ、「何のために働いているのだろう」という虚無感につながります。

休日返上の部活動と学校行事

土日や長期休業中も、部活動指導や学校行事の準備で心身を休める暇がない、というのも教員ならではの悩みです。

要因具体的な内容
部活動の引率・指導・土日祝日の試合や練習に朝早くから夜遅くまで付きっきりになる。
・顧問を断りにくい、または顧問を辞めると人間関係に影響が出るプレッシャーがある。
学校行事の準備・運営・運動会や文化祭の準備が平日では間に合わず、休日出勤が常態化する。
・行事後の代休も形骸化し、消化できないままに終わる。

「プライベートの時間がない」「家族との時間が取れない」という状態は、ワークライフバランスの崩壊を招き、疲弊を加速させます。

理不尽な要求をする保護者対応

保護者や地域住民からの「理不尽な要求」や「過剰なクレーム」への対応も、先生方の心をすり減らします。

要因具体的な内容
モンスターペアレント問題・SNSなどで学校や教員への批判が広がることを恐れ、毅然とした対応が取りにくい。
時間外の電話・訪問・緊急性の低い内容でも、夜間や休日に対応せざるを得ないケースがある。
教員の責任範囲を超える要求 ・「家庭内での指導も学校がすべき」といった、学校の役割を超えた要求への対応。

同僚や管理職との人間関係

学校という閉鎖的な空間での人間関係の悩みも深刻です。

要因具体的な内容
年功序列の風土・若手が意見を言い出しにくい。
・新しい取り組みが歓迎されない。
ハラスメント・パワーハラスメントやモラルハラスメントが横行していても、相談しにくい、異動を願い出にくい。
管理職のマネジメント不足・教員の疲弊を知りつつも、「生徒のため」という言葉で精神論を振りかざし、具体的な業務改善が進まない。

信頼できる同僚や管理職が少ない環境では、日々の業務ストレスを解消するどころか、さらに人間関係のストレスが積み重なってしまいます。

限界なら辞めてもいい。自分を守るための3つの選択肢

「限界だ」と感じているなら、決して無理をしないでください。「生徒のため」という責任感は素晴らしいですが、その前にあなた自身の心身の健康が最優先です

現職の教員が、自分を守り、状況を打開するために取れる具体的な3つの選択肢を解説します。

環境を変えず休む「休職制度」

すぐに辞める決断ができない、あるいはまだ教員を続けたい気持ちがある場合は、「休職制度」を利用して心身を回復させる時間を取りましょう。

選択肢メリットデメリット
休職制度 ・給与の一部が保障される期間がある(自治体による)。
・籍を残したまま、心身の回復に専念できる。 
・復帰後の勤務体制を相談できる場合がある。
・長期化すると給与が減額・停止される。
 ・復帰後の環境が改善されていない可能性がある。 
・診断書の取得や手続きが必要。

まずは信頼できる医師に相談し、診断書をもらうことが第一歩です。休んでいる間に、本当に自分が何をしたいのか、時間をかけて考えることができます。

職場を変える「異動・転籍」

公立学校教員の場合、教員を続けることを前提として、所属する自治体内で「異動」を申し出る選択肢があります。

選択肢メリットデメリット
異動・転籍 ・教員としてのキャリアを継続できる。
 ・人間関係や学校の雰囲気など、環境を一新できる。 
・(私立の場合)給与や労働条件の交渉ができる可能性がある。
・根本的な制度(給特法など)は変わらない。
・ 異動先の環境が必ずしも良いとは限らない。
 ・異動の希望が通るとは限らない。

異動を希望する際は、希望理由を具体的にし、できれば現在の状況を校長に相談することが重要です。

業界を変える「異業種への転職」

教員以外の職種、業界に飛び出す「転職」は、最も抜本的に状況を変える選択肢です。

選択肢メリットデメリット
異業種への転職 ・労働時間や給与体系が明確なホワイト企業を選べる。 
・教員の仕事では得られなかったスキルやキャリアを築ける。
 ・ 給特法の制約から完全に解放される。
・未経験分野へのチャレンジになる。 
・安定した公務員という立場を失うリスク。
 ・ 転職活動に時間と労力を要する。

教員の経験が武器になる!人気転職先と成功の秘訣

教員からの転職に人気な業界

「教員経験は潰しが効かない」なんてことはありません。

むしろ、教育業界での経験は、企業が求めるスキルを多く持っています。

ここでは、教員の経験が特に活きる人気の転職先と、転職成功の鍵となる考え方を紹介します。

成長市場で活躍【EdTech業界】

「Education(教育)」と「Technology(技術)」を組み合わせた分野で、教材開発、学習管理システム(LMS)、オンライン教育サービスなどを手掛ける企業です。

活かせるスキル職種例
指導経験・教材知識 コンテンツ企画・開発: 現場のニーズに基づいた教材やサービスの企画
ユーザー視点カスタマーサクセス(CS): 導入校へのフォロー、活用支援
プレゼン・ファシリテーションセールス(営業): 学校や企業へのサービス導入提案

教育に対する熱意を持ちつつ、新しい働き方やテクノロジーに触れたいと考える先生方に非常に人気が高まっています。

人の成長を支える【人材・研修業界】

企業向けの研修サービスや、個人向けのキャリア支援(人材紹介・派遣)などを提供する業界です。

活かせるスキル職種例
指導・育成能力企業研修講師: 企業の新入社員や管理職向け研修の実施
傾聴力・コミュニケーションキャリアアドバイザー: 求職者のヒアリング、転職支援
課題発見・解決力人材コンサルタント: 企業の人事課題解決の提案

「人を育てる」という教員の核となる情熱を、企業や社会人の成長という形で実現できます。

安定と専門性【民間企業の事務・企画】

教員経験者の中には、ワークライフバランスの改善と安定を求めて、一般企業のバックオフィス部門を目指す方も多くいます。

活かせるスキル職種例
文書作成・管理能力総務・人事: 契約書作成、社員データ管理、採用活動補助
計画性・実行力企画・広報: プロジェクトの計画立案、社内報・PR資料の作成
マルチタスク処理能力営業事務・経理補助: 営業サポート、請求書作成など

教員が日常的に行ってきた「緻密な計画立案」「大量の書類管理」「マルチタスク処理」は、企業で求められる基本的なビジネススキルとして通用します。

転職成功の鍵は「自己分析」

教員からの転職を成功させる鍵は、徹底した「自己分析」です。

ステップ具体的な内容
経験の「棚卸し」    授業運営、保護者対応、部活動、委員会活動などで「何を」「どのように」行い、「どんな結果」を出したかを具体的に書き出す。
スキルへの「変換」「生徒を熱心に指導した」を「多様な対象に合わせたコミュニケーション戦略を立てた」のように、ビジネス用語に変換し、汎用スキルとして言語化する。
「価値観」の明確化「なぜ辛いのか」「仕事に何を求めるのか(給与、時間、やりがい)」を明確にし、譲れない条件を整理する。

まとめ:一人で悩まず、まずはキャリアのプロに相談しよう

教員という仕事は尊く、その責任感から「辞めてはいけない」と感じているかもしれません。しかし、心身を壊してまで続ける必要はありません。

少しでも悩んだ際には、教育業界特化の転職エージェント「教育転職ドットコム」にご相談ください。

  • 今の状況が客観的に見てどうなのかを知りたい
  • 自分の経験が他の業界で通用するのか知りたい
  • 具体的な転職先や求人を見てみたい

どんな些細な疑問でも構いません。信頼できるキャリアアドバイザーに相談することで、絡まった糸が解け、次のステップへの具体的な道筋が見えてくるでしょう。

この記事の監修者

教育転職ドットコム 田中

教育転職ドットコム 田中

代表取締役

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教員の道を志すもまずはビジネス経験を積もうとコンサルティングファームに入社の後、リクルートに転職。人事採用領域と教育領域で12年間、法人営業および営業責任者として従事し、年間最優秀マネジャーとして表彰。退職後、海外教育ベンチャーの取締役などを経て株式会社コトブックを創業。大手学習塾や私立大学など教育系企業のコンサルティングなど教育領域に関する知見を活かし、教育領域の転職支援を行う傍ら、京都精華大学キャリア科目の非常勤講師も務める。

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