塾講師のやりがいとは?仕事の内容と喜びを深掘り解説

この記事の監修者

教育転職ドットコム 吉田
キャリアアドバイザー
詳しく見る新卒で会計コンサルティングファームに入社し内部統制構築支援や決算早期化支援プロジェクト等に携わった後、リクルートへ転職。教育領域で大学を中心とした高等教育機関の募集戦略の策定やマーケティング支援に携わる。その後学習塾を立ち上げ、創業2か月で単月黒字を達成。学習塾運営のみならず、高校大学受験のための進路指導講演会、高校入試問題の作成等、「教育」分野へ広範にわたって関わり、2022年株式会社コトブックへ参画。
「今の仕事に物足りなさを感じているけれど、本当に人の役に立つ仕事ってなんだろう?」
心のどこかで「もっと直接的に、誰かの人生に良い影響を与えたい」と思ったことはありませんか?もしそうなら、塾講師という仕事はあなたに合っているかもしれません。
この仕事は、単に知識を教えるだけではありません。勉強が苦手だった子が少しずつ点数を上げたり、合格して泣いて喜ぶ姿を間近で見たり。そういう瞬間に立ち会えるのが、この仕事の大きなやりがいです。
この記事では、現職での経験を活かし、塾業界へ飛び込んだ社会人のリアルな声から、具体的な仕事のやりがい、業界データまで、「塾講師というキャリア」のすべてを深掘りして解説します。
【事例】元営業職・Aさん(28歳)のやりがい
「人の役に立つ実感」を求めて塾講師に転職し、今、集団塾の文系講師(英語・国語を担当)として活躍している、元営業職のAさんの体験談をご紹介します。
Aさん(女性)のプロフィール
最終学歴:大卒
転職時の年齢:28歳
転職前: 求人広告の法人営業職
転職後: 大手集団塾の文系講師(英語・国語担当)
転職前「数字だけの評価への葛藤」
私は新卒から6年間、求人広告の法人営業として働いていました。たくさんのお客様の役に立てるのではないかと考え、人材業界を選びました。
結果を出せば出すほど評価され給与は上がり、社内表彰されるなど、営業としての喜びもたしかにありました。しかし、その一方で常に付きまとうのは「目標数字」という重圧でした。
「この商品は本当に顧客のためになっているのか?」「売上を伸ばすことが、自分の人生で本当にやりたいことなのか?」
営業の仕事自体は好きでしたが、次第に数字の達成自体が目的となり、「顧客への貢献」と「売り上げの達成」のバランスが崩れていき、心が少しずつすり減っていくように感じました。顧客からの感謝の言葉ももちろんありましたが、それが売上に直結しない限り、正当に評価されないという環境に葛藤を感じていたんです。
見つけた「ありがとう」の価値
営業の仕事を通して、やはり自分は“目の前の人”に関わりながら貢献できる仕事がしたい――そう強く思うようになりました。そこで選んだのが教育業界。その中でも、生徒一人ひとりと毎日向き合える塾講師という仕事でした。
転職して一番大きく変わったのは、「ありがとう」という言葉の重みです。
生徒がテストで目標点を達成したとき、難しかった問題が解けるようになったとき、そして志望校に合格した瞬間。彼らが発する「先生のおかげで頑張れました、ありがとう」は、営業で大口契約を取ったときの喜びとはまったく違う、胸の奥が熱くなるような喜びでした。
ここには、「人の成長」という最高の価値があり、それがそのまま自分のやりがいにつながっている――そう実感しています。
生徒や保護者からの感謝は、自分自身が社会に貢献できている揺るぎない証拠だと感じています。
営業経験が活きたコミュニケーション術
私自身、塾でのアルバイトの経験などもなかったので、塾講師は完全に未経験でした。同じように「教育業界は未経験で不安」と感じていらっしゃる方もいるかもしれませんが、心配はいりません。
前職で培ったスキルは、塾講師の仕事に活かせていると日々感じています。私の場合、営業で鍛えられた「ヒアリング力」と「目標管理」が強力な武器になりました。
営業職で培ったスキル | 塾講師として活かせる場面 |
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ヒアリング力・傾聴力 | 生徒の成績不振の根本原因(勉強法、生活習慣、精神状態など)を見抜く。保護者の不安や要望を的確に把握する。 |
プレゼンテーション力 | 授業をわかりやすく、かつ生徒の集中力を保つエンターテイメント性をもって行う。 |
クロージング力・交渉力 | 生徒に対して目標達成への動機付けを行い、行動を促す。進路指導で納得感のある提案をする。 |
目標管理(PDCA) | 生徒一人ひとりの学習計画を立て、進捗を管理し、結果を分析して次の指導に活かす。 |
塾講師の仕事は、生徒という「顧客」の課題を分析し、最適な「ソリューション(学習計画)」を提供し、結果に導くという点では、前職で行っていたコンサルティング営業に非常に近いのではないかと実感しています。
あなたが求める「やりがい」はどのタイプ?

あなたが塾講師に転職して、得たいやりがいはどのようなものでしょうか?転職後のミスマッチを防ぐためにも漠然とした願望をしっかりと明確にすることが必要です。
①「合格への道筋」を描くやりがい
これは、戦略家・プロジェクトマネージャーの資質を持つ人に響くやりがいです。
喜びの源泉: 複雑な状況を整理し、合理的な計画を立て、それが計画通りに実行されて結果が出たとき。
具体例 1 | 生徒の現状の学力と志望校との差やそのためにやるべきことを詳細に分析する。 |
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具体例 2 | 膨大な情報を整理し、逆算して「いつまでに何をすべきか」という学習計画を作成・実行する。 |
具体例 3 | 生徒を巻き込み、計画を完遂に導く進捗管理とモチベーション維持を行う。 |
目標達成の喜びを知る元営業職や、プロジェクトマネジメント経験のある方、緻密な計画立案を得意とする方に最適です。
②「生徒の成長」に寄り添うやりがい
これは、教育者・メンターとしての資質を持つ人に響くやりがいです。
喜びの源泉: 生徒の人間的な変化を間近で見られたとき。
具体例1 | 成績向上だけでなく、「勉強の楽しさに気づいた」「諦め癖がなくなった」「自律的に行動できるようになった」といった内面的な変化を引き出す。 |
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具体例2 | 生徒にとって「信頼できる大人」として、学習面以外の悩みにも耳を傾け、適切なアドバイスをする。 |
具体例3 | 「先生の授業のおかげで、将来の夢が見つかった」といった言葉をもらったとき。 |
「人の役に立っている実感」をダイレクトに得たい方に、最も響くやりがいでしょう。
③「知的好奇心」を刺激するやりがい
これは、研究者・専門家としての資質を持つ人に響くやりがいです。
喜びの源泉: 教えることそのものへの情熱と、それを追求する喜び。
具体例 1 | どうすれば難しい内容を「誰にでもわかる言葉」で説明できるかを追求し、最高の授業コンテンツを作り上げたとき。 |
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具体例 2 | 生徒の素朴な疑問に対して、専門知識を駆使して新たな視点を与えることができたとき。 |
具体例 3 | 最新の教育トレンドや入試情報を常に学び続け、自己成長を感じられる環境にあること。 |
④「教室の発展」を担うやりがい
これは、経営者・リーダーとしての資質を持つ人に響くやりがいです。
喜びの源泉: 自分のアイデアや行動が、組織の成長に直結したとき。
具体例 1 | 教室長として教室の売上・生徒数を目標達成に導く。 |
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具体例 2 | 新しいイベントやコースを企画・実施し、信頼や集客力を高める。 |
具体例 3 | 後輩講師の育成や、より働きやすい環境づくりのために組織運営に携わる。 |
将来的にマネジメント職や経営に関わりたい、あるいは独立を目指したいと考えている方にとって、よい経験を積むことができます。
【データで見る】塾講師というキャリアの将来性

塾講師への転職を検討する際「少子化だから将来性がないのでは?」「給与は安定しているのか?」といった不安を抱く方も少なくないでしょう。ここでは、データに基づき、塾業界のリアルな未来について考察します。
業界の市場規模と安定性
1. 市場規模の推移
学習塾の一年間の売上高の推移
2022年 | 約5,568億円 |
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2024年 | 約5,934億円 |
(参照:経済産業省 特定サービス産業統計調査)
この売上高の推移は、二年間で学習塾の売上高が約366億円も増加したことを表し、少子化にもかかわらず市場規模が拡大傾向にあることを示しています。
2. 教育費支出の動向
子供の学習費の推移
対象校種 | 学習塾費(年間平均) | 調査年度 |
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公立中学校 | 34.9万円 | 令和3年度(2021年度) |
39.6万円 | 令和5年度(2023年度) | |
公立高等学校 | 38.2万円 | 令和3年度(2021年度) |
43.0万円 | 令和5年度(2023年度) |
(参照:文部科学省 「子供の学習費調査」)
このデータは、わずか2年間で公立中学校の学習塾費が約4.7万円、公立高等学校では約4.8万円と大幅に増加していることを示しています。これは、受験を控える公立学校の生徒に対する塾費が年々高額化していることを裏付けています。
この明確な増加傾向は、少子化が進む中でも、保護者の教育熱の高まりを背景に、子ども一人当たりの教育投資意欲が非常に高い水準で継続していることを意味します。この「需要の継続性・安定性」こそが、学習塾業界の市場規模を支える最大の要因となっています。
リアルな年収とキャリアパス
「教育、学習支援業」の年収は、若手層において全産業の平均値とほぼ遜色ない水準にあります。
年齢層別 平均年収の比較
区分 | 20代後半 (25〜29歳) | 30代前半 (30〜34歳) |
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教育、学習支援業 | 約391万円 | 約469万円 |
全産業平均 | 約391.8万円 | 約469.7万円 |
(参照:厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査)
これはあくまで業界全体の平均値です。
企業によって多少の差はありますが、正社員の塾講師であればキャリアアップしていけば年収アップにつながることが圧倒的に多いです。
キャリアパス例 | 年収目安 | 役割 |
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講師(未経験スタート) | 300万〜450万円 | 授業・生徒対応。まずはプロの講師としてのスキルを磨く。 |
教室長/教務主任 | 450万〜700万円 | 教室の運営・マネジメント、保護者面談、講師育成。経営的な視点が求められる。 |
エリアマネージャー/本部の企画職 | 700万円以上 | 複数教室の統括管理や、教材・新規事業の企画開発。経営層に近いポジション。 |
未経験からでも、マネジメント能力や成果次第で、年収700万円以上を目指すことは十分に可能です。
今、社会から求められる塾講師
現代の教育界は、大きな変革期を迎えています。この変化が、塾講師の社会的役割をより重要にしています。
教育の動向 | 塾講師の新たな役割 |
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大学入試の変化 | 知識の暗記型から、思考力・表現力が問われる総合型選抜・学校推薦型選抜の割合が増加。 |
GIGAスクール構想 | ICT教育の普及により、個別最適な学びと探究学習の必要性が高まる。 |
高校指導要領改訂 | 「探究学習」など、正解のない問いに取り組む力が求められる。 |
学校の画一的な授業だけでは、これらの変化に対応しきれません。
だからこそ、生徒一人ひとりの個性や進捗に合わせて、思考力を鍛える指導ができる塾講師の役割が、今後ますます社会から強く求められています。あなたの持つ「課題解決力」や「提案力」は、この新しい教育ニーズに合致する強力な武器となります。

やりがいの裏にある、知っておくべき現実
塾講師の仕事は素晴らしいやりがいがありますが、その裏側には、もちろん難しさや大変さもあります。その実態をご紹介します。

責任の重さとプレッシャー
保護者から大切な子どもを預かり、子どもたち一人ひとりの未来を扱う仕事であるため、その責任は非常に重いです。
合否へのプレッシャー | 特に受験学年を担当する場合、生徒の努力を「合格」という結果に結びつけるための、高いプレッシャーと緊張感があります。 |
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モチベーション維持 | 成績が停滞したときや、生徒がスランプに陥ったとき、講師が生徒の心の状態を立て直すための精神的なタフさが求められます。 |
ミスが許されない責任 | 進路指導や入試情報でミスは許されません。常に最新の正確な情報をキャッチアップし続ける義務があります。 |
時間外業務と休日の実態
「残業が多いのでは?」「休日出勤が多そう」という懸念を持つ方もいるでしょう。これは業界全体というよりも、企業によるところが大きいので、転職する際はその企業のリアルな働き方や、働き方に関する制度のなどの確認を事前にしっかりと行うことをおすすめします。
業務の種類 | 実態 |
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授業準備・教材研究 | 基本的に授業準備や教科研究は業務時間内で行う企業が多いですが、中には勤務時間外で教材研究や予習を行うことが実態となっているケースもあります。 |
時間外対応 | 授業時間外の質問対応や、緊急時の保護者からの電話対応などは残業や早出を行い対応することがあります。 |
休日の実態 | 日曜日+平日1日が休みといった、完全週休2日の塾が多いですが、夏期講習や直前講習の期間は、まとまった休みが取りにくいことがあります。 |
最近は労務管理を徹底し、残業代をしっかり支給する企業が増えています。転職活動時には、面接で具体的な残業時間や休日体制を確認することが重要です。
制度やデータだけでなく実態も知りたい場合は、転職エージェントに相談するのもおすすめです。

保護者対応で求められること
塾講師の仕事は生徒指導だけではありません。保護者との連携は、生徒を導く上で不可欠です。ときには厳しい現実を伝えなければならなかったり、クレーム対応に追われたりと、難易度の高いコミュニケーションが求められることもあります。
期待値の調整 | 保護者の「こうなってほしい」という期待と、生徒の現実的な能力とのギャップを埋めるためのコミュニケーション力。 |
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信頼関係の構築 | 成績不振や退塾の相談時など、感情的になりやすい場面で、冷静かつ専門的な立場から対応し、信頼を維持することが求められます。 |
営業的要素 | 生徒の成績を分析し、最適な追加コースやカリキュラムを提案する場面も多いです。 |
それでも「続けたい」と思える魅力
厳しさやプレッシャーがあるにもかかわらず、多くの塾講師がこの仕事を続けるのは、それらを凌駕する「他に代えがたい魅力」があるからです。
それは、生徒という「未来」への投資です。
この仕事の報酬は、合格という「結果」だけでなく、一人の人生を良い方向に変える瞬間に立ち会えたという深い充実感と感動が得られることがあります。これは、他の仕事ではなかなか得られない、教育者としての真価を発揮できる、意義深い魅力です。
教育業界への転職を成功させるために
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この記事の監修者

教育転職ドットコム 吉田
キャリアアドバイザー
詳しく見る新卒で会計コンサルティングファームに入社し内部統制構築支援や決算早期化支援プロジェクト等に携わった後、リクルートへ転職。教育領域で大学を中心とした高等教育機関の募集戦略の策定やマーケティング支援に携わる。その後学習塾を立ち上げ、創業2か月で単月黒字を達成。学習塾運営のみならず、高校大学受験のための進路指導講演会、高校入試問題の作成等、「教育」分野へ広範にわたって関わり、2022年株式会社コトブックへ参画。