塾講師 正社員 辞めたい…後悔しないための退職ロードマップ

塾講師-正社員-辞めたい…後悔しないための退職ロードマップ

この記事の監修者

教育転職ドットコム 吉田

教育転職ドットコム 吉田

キャリアアドバイザー

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新卒で会計コンサルティングファームに入社し内部統制構築支援や決算早期化支援プロジェクト等に携わった後、リクルートへ転職。教育領域で大学を中心とした高等教育機関の募集戦略の策定やマーケティング支援に携わる。その後学習塾を立ち上げ、創業2か月で単月黒字を達成。学習塾運営のみならず、高校大学受験のための進路指導講演会、高校入試問題の作成等、「教育」分野へ広範にわたって関わり、2022年株式会社コトブックへ参画。

この記事の目次

こんなお悩みありませんか?

  • 数年後のキャリアが見えず、将来が不安だ 。
  • 長時間労働で、プライベートの時間が全くない 。
  • 他の職種に挑戦してみたいけれど、どうすればいいかわからない。

教育業界専門の
キャリアアドバイザーが担当

はじめに

「生徒の『分かった!』という笑顔が、何よりのやりがい。でも、この仕事を一生続けていけるんだろうか…」

そんな不安を抱える人もいるのではないでしょうか。そんな時には転職をすることも選択肢の一つです。

後悔のない選択をするために、円満退職の進め方から、退職前に最低限準備すべきこと、そしてあなたの素晴らしい経験が活きる次のキャリアまで、具体的なロードマップをご紹介します。

「辞めたい」は甘えじゃない。心身が限界なサイン

「やりがい」という言葉だけで乗り越えるには、あまりにも過酷な現実があります。もしあなたが以下の状況に当てはまるなら、それは個人の頑張りや根性の問題ではなく、労働環境そのものに原因がある可能性が高いです。

長時間労働と休日出勤
営業ノルマと保護者対応の重圧
数年後のキャリアが見えない不安

長時間労働と休日出勤

塾講師の業務は多岐にわたります。授業だけでなく、その準備、事務作業、保護者対応なども含まれ、残業も多くなってしまう傾向があります。また、学校が休みの土日に授業が集中しやすく、特に繁忙期にはほぼ毎日授業が入ることも珍しくありません。

  • 終わらない授業準備
    • 担当教科や学年が多ければ多いほど、授業準備の時間は膨れ上がります。
  • 季節講習という名の繁忙期
    • 夏期・冬期講習中は、朝から晩まで授業が詰まり、休日返上で働くことも珍しくありません。
  • テスト期間と休日出勤
    • 定期テスト対策や模試の監督・採点で、貴重な週末が潰れてしまいます。

厚生労働省の統計によると、学習塾講師の月の平均勤務時間は約166時間です。ただし、この数字には授業準備や保護者対応など統計に表れにくい業務が含まれない場合もあり、実態としては心身を休める時間が少ないと感じる講師も少なくありません。

参考文献:厚生労働省https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/396

営業ノルマと保護者対応の重圧

「先生」であると同時に、「営業担当」としての役割を求められることが、ストレスと感じられることもあります。

  • 売上目標(ノルマ)
    • 在籍生徒数、講習の受講率、新規入塾者数など、数字としての成果を求められます。
  • 保護者対応の心労
    • 教育方針への要望、成績に対する厳しい指摘、時には理不尽なクレームなど、精神的な負担も発生しえます。生徒のために、と真摯に向き合うほど、板挟みになって疲弊してしまいます。

教えることへの情熱が、営業成績やクレーム対応に追われる中で少しずつ薄れてしまい、やりがいを見失いそうになる瞬間もあるでしょう。

数年後のキャリアが見えない不安

3年後、5年後、10年後の自分の姿を想像したとき、キャリアの停滞感に襲われる講師は少なくありません。

  • 限られた昇進ポスト
    • 教室長やエリアマネージャーといった役職は数が限られており、キャリアの道筋を描きにくい面があります。特に小規模な塾ではポストが空くまでに時間を要し、昇進が遅れるケースも見られます。
  • 給与の伸び悩み
    • 授業での成果が評価につながる塾講師の仕事は、経験を重ねても年齢とともに収入が大きく伸びにくい傾向があります。
  • 汎用スキルの不足:
    • 教科指導力は高まる一方で、他業種で通用するビジネススキルの習得には不安を感じる人も少なくありません。

自分の努力だけでは改善が難しいと感じる閉塞感が、退職を意識するきっかけの一つとなっています。

塾講師の経験年数別、所定内給与額(月)

出典:厚生労働省 https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/396

円満退職へ。辞める時期と伝え方の完全ガイド

退職を決意したら、次に考えるべきは「どう辞めるか」。お世話になった職場や大切な生徒たちへの影響を最小限に抑え、円満に退職するための段取りを解説します。

ベストな退職時期は年度末

特別な事情がない限り、退職する最も良いタイミングは年度末(3月末)と言われています。理由としては以下のことがあげられます。

理由具体的な内容
生徒への影響が少ない学年が切り替わるタイミングなので、担当変更による生徒の混乱を最小限にできる。
業務の区切りが良い受験指導や年度末の事務処理が一段落し、業務を引き継ぎやすい。
後任者が見つかりやすい   企業の中途採用が活発になる時期と重なるため、会社側も後任を採用しやすい。

年度末の退職を目指して、計画的に準備を進めるのが理想的です。

退職の意思を伝えるタイミング

退職の意思は、退職希望日の3ヶ月前には直属の上司(教室長やエリアマネージャー)に伝えるのがマナーです。遅くとも、就業規則に定められた期間(通常は1〜2ヶ月前)は必ず守りましょう。そして、塾の繁忙期である受験直前にやめると塾としても対応が追いつかず、多方面に影響がでるため、避けることで円満な退職に繋がります。

【伝える際のポイント】

  • まずは口頭で
    • メールや電話ではなく、必ず直接会ってアポイントを取り、「ご相談したいことがあります」と伝えます。
  • 理由は前向きに
    • 「不満があって辞める」ではなく、「新しい分野に挑戦したい」など、ポジティブな理由を準備しておくと、スムーズに話が進みやすくなります。
  • 退職願の提出
    • 正式な退職日が決まったら、会社の規定に従い退職願を提出します。

信頼を失わない引き継ぎのコツ

最後まで責任を持って業務を全うする姿勢を見せることが重要です。下記のチェックリストを確認してみてください。

【引き継ぎチェックリスト】

  • 引き継ぎ資料の作成
    • 担当生徒の個人ファイル(性格、学力、志望校、保護者の要望など)を最新の状態に更新する。
  • 業務マニュアルの整理
    • あなたが担当していた事務作業や教室運営のノウハウを文書でまとめる。
  •  後任者との情報共有
    • 後任者が決まったら、時間を設けて丁寧に業務内容を説明し、質問に答える。
  • 備品の返却
    • 塾の備品(プリンター、パソコンなど)を持ったままでいると、後々のトラブルに繋がる可能性があるので、しっかり返却する。
  • 関係者への挨拶
    • 特にお世話になった保護者や生徒には、会社の指示に従い、適切なタイミングで挨拶をする。

後悔しないために。退職前に最低限準備すべきこと

「辞めたい」という気持ちだけで突っ走るのは危険です。冷静に、そして計画的に準備を進めることが、後悔しないための鍵となります。

後悔しないために。退職前に最低限準備すべきこと

最低3ヶ月分の生活費を計算

退職後、すぐに次の仕事が決まるとは限りません。経済的な不安は、冷静な判断を鈍らせる最大の敵です。まずは、自分に必要な「生活防衛資金」を把握しましょう。

費目月額の目安
家賃¥______
食費¥______
水道光熱費¥______
通信費¥______
税金・社会保険料¥______
その他(交際費など)¥______
合計¥______

この合計額の最低3ヶ月分、理想は6ヶ月分の貯蓄があると、心に余裕を持って転職活動に臨めます。

転職活動のスケジュールを立てる

在職中に転職活動を進めるのが基本です。退職日から逆算して、具体的なスケジュールを立てましょう。下記は一例ですが、転職には3か月〜6か月かかることが多く、余裕をもつためには9月から転職活動を始めることが必要です。

【転職活動スケジュール(例:3月末退職の場合)】

計画
9月〜10月自己分析、キャリアの棚卸し、履歴書・職務経歴書の準備、エージェント登録。
10月〜12月企業応募、書類選考、一次・二次面接。
1月〜2月最終面接、内定獲得。
3月退職に向けた引き継ぎに専念。

自身のキャリアを一度棚卸しする

「自分には、教科を教えるスキルしかない…」なんてことは決してありません。あなたの経験を、ビジネスの世界で通用する「スキル」として言語化しましょう。

業務内容実績・成果身についたスキル
英語指導担当生徒の偏差値を半年で10アップ     目標達成能力、計画立案力
保護者面談クレーム対応を信頼関係の構築に繋げた傾聴力、交渉力、課題解決能力
夏期講習の企画  前年比120%の受講率を達成プレゼンテーション能力、マーケティング視点

この作業をすることで、職務経歴書の内容が充実し、面接での自己PRにも深みが出ます。

有給休暇の残り日数を確認する

意外と見落としがちなのが有給休暇です。残っている日数を必ず確認し、計画的に消化しましょう。転職活動の面接日に充てたり、退職前にリフレッシュ期間を設けたりと、有効に活用できます。

大丈夫。あなたの経験が活きる次のキャリア選択肢

あなたが塾講師として培ったスキルは、教育業界以外でも高く評価されます。ここでは、代表的な4つのキャリア選択肢を紹介します。

人材業界(キャリアアドバイザー)

生徒の進路相談で、その子の将来を一緒に考えた経験はありませんか?キャリアアドバイザーは、まさにその経験を社会人向けにスケールアップさせた仕事です。求職者の「先生」として、その人の人生の大きな一歩をサポートします。

活かせるスキル生徒や保護者との面談で培ったカウンセリング能力、志望校合格に向けて伴走した目標設定力傾聴力
仕事の魅力            誰かの人生の転機に深く関わり、「あなたのおかげで人生が変わった」と直接感謝の言葉を聞けます。また、多くの企業で土日休みが基本となるため、ワークライフバランスの改善も期待できます。
キャリアパスの広がり経験を積めば、法人向けの採用コンサルタントや、チームをまとめるマネージャー、独立してフリーランスのキャリアコンサルタントとして活躍する道も拓けます。
こんなひとにおすすめ生徒の進路相談にやりがいを感じ、誰かの人生を本気で応援したい人。

・塾講師→人材業界に転職したAさんの事例

Aさんのプロフィール
  • 26歳 女性
  • 大学卒業後、塾講師として2年勤務。
  • 転職後の職種:人材業界キャリアカウンセラー

転職動機

自身は傾聴力、問題解決能力などが優れていると感じ、それらが異業種でも通用すると実感し、それを活かしたいという思いで新たな分野へ挑戦した。

転職成功のポイント

  • 保護者対応の経験:
    • 相手の背景を理解し、共感する傾聴力と問題解決能力をアピール。
  • 授業運営の経験:
    • 情報を構造化し、分かりやすく提示する能力をアピール。
  • 進路指導の経験:
    • 目標に向けて具体的な計画を練り、達成まで導いた経験をアピール。

転職後

  • 顧客対応:
    • 保護者対応で培った傾聴力と共感力を活かし、クレーム対応も冷静な話し合いに導いた。
  • マニュアル作成:
    • 授業設計の経験を活かし、誰にでも分かりやすい業務マニュアルを作成し、マニュアル作成を依頼されるようになった。
  • キャリアカウンセリング:
    • 進路指導の経験を活かし、相談者の強みを見つけて具体的なキャリアプランを提示した。

IT業界(カスタマーサクセス)

今、急成長しているIT業界で最も塾講師の経験を活かせるのが「カスタマーサクセス」です。これは、自社のITツール(サービス)を契約した顧客が、そのツールを最大限に活用してビジネス上の成功を収められるように、能動的にサポートし続ける仕事です。

活かせるスキル        生徒が目標達成するまで寄り添い続けた伴走力、つまずきの原因を見つけて解決策を提示する課題解決能力
仕事の魅力急成長中の業界で、市場価値の高い専門性を身につけることができます。「教える」スキルを活かして顧客を成功に導き、自社の売上にも貢献する、攻めのサポート職です。
キャリアパスの広がりチームリーダーマネージャーはもちろん、顧客の声をサービス開発に活かすプロダクトマネージャーや、より専門性を高めたコンサルタントへの道もあります。
こんなひとにおすすめ生徒の成績が上がっていく過程を見るのが好きで、成長産業で自分自身も成長したい人。

塾講師からIT業界に転職したBさんの事例

Bさんのプロフィール
  • 28歳 男性
  • 大学卒業後塾講師として5年勤務
  • 転職後の職種:IT企業のカスタマーサクセス

転職動機:ITツールの導入が教育現場に大きな良い影響を与えることを実感し、塾という限られた範囲だけでなく、より多くの学校や教育機関にIT活用の価値を広げていきたいという思いをもったため。

転職成功のポイント

  • 現場目線でのIT推進スキル:
    • ITを導入するにあたって感じた課題感や、どのようにしたらIT化が進めやすいのかという経験。
  • 高度な対人関係構築力:
    • クレームに発展しがちな保護者の要望を深くヒアリングし、信頼関係を築き、良好な関係へと改善させたコミュニケーション能力。

企業の研修・人事担当

人前で分かりやすく教え、人の成長を促すスキルは、企業の人材育成において非常に求められています。

活かせるスキル          大勢の生徒を惹きつけたプレゼンテーション能力、年間計画を立てたカリキュラム作成能力、そして社員の成長を願う人材育成への情熱
仕事の魅力一企業の成長を「人材」という側面からダイレクトに支えることができます。自分が企画した研修で社員が成長し、会社の業績が向上していく様は、生徒の成長とはまた違った大きな喜びがあります。
キャリアパスの広がり研修担当を極めるだけでなく、採用や労務、人事制度設計など、人事領域のスペシャリストとしてキャリアの幅を広げていくことが可能です。
こんなひとにおすすめ授業の組み立てや教材作りが得意で、「人の成長」を会社の成長に繋げたい人。

教育系の法人営業

「教育の仕事には関わり続けたい。でも、働き方は変えたい」そんなあなたに最適なのが、教育系の企業で学校や塾へ自社サービスを提案する法人営業です。現場を知っているからこそ、その提案には誰にも負けない説得力が生まれます。

活かせるスキル            保護者対応で培った信頼関係構築力、生徒の課題を聞き出したニーズ把握能力、そして講習や教材を勧める提案力
仕事の魅力元・塾講師という現場経験が最大の武器になります。顧客の課題に深く共感し、的確な提案ができるため、未経験からでもトップセールスを目指せます。頑張りがインセンティブとして給与に反映されやすいのも特徴です。
キャリアパスの広がり営業のプロとしてキャリアを積むのはもちろん、営業企画やマーケティング、新サービスの開発など、ビジネスサイドの中核を担うキャリアへ発展させられます。
こんなひとにおすすめ教育への情熱はそのままに、よりビジネスの世界で自分の力を試してみたい人。

まとめ

ここまで、塾講師を辞めたいと感じているあなたへ、後悔しないための具体的なロードマップを解説してきました。

「辞めたい」という気持ちは、決して逃げでも甘えでもありません。それは、あなたが自分自身のキャリアと人生に真剣に向き合っている証拠です。

大切なのは、冷静に、そして計画的に次の一歩を踏み出す準備をすること。 これまで生徒一人ひとりと真剣に向き合い、培ってきた経験とスキルは、次のキャリアに生きてくるものです。

この記事の監修者

教育転職ドットコム 吉田

教育転職ドットコム 吉田

キャリアアドバイザー

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新卒で会計コンサルティングファームに入社し内部統制構築支援や決算早期化支援プロジェクト等に携わった後、リクルートへ転職。教育領域で大学を中心とした高等教育機関の募集戦略の策定やマーケティング支援に携わる。その後学習塾を立ち上げ、創業2か月で単月黒字を達成。学習塾運営のみならず、高校大学受験のための進路指導講演会、高校入試問題の作成等、「教育」分野へ広範にわたって関わり、2022年株式会社コトブックへ参画。

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