塾講師は結婚後も続けられる?両立の現実と広がるキャリアの可能性

この記事の監修者

教育転職ドットコム 吉田
キャリアアドバイザー
詳しく見る新卒で会計コンサルティングファームに入社し内部統制構築支援や決算早期化支援プロジェクト等に携わった後、リクルートへ転職。教育領域で大学を中心とした高等教育機関の募集戦略の策定やマーケティング支援に携わる。その後学習塾を立ち上げ、創業2か月で単月黒字を達成。学習塾運営のみならず、高校大学受験のための進路指導講演会、高校入試問題の作成等、「教育」分野へ広範にわたって関わり、2022年株式会社コトブックへ参画。
はじめに
「生徒を教える仕事が大好き。でも、結婚後もこの働き方を続けられるのかな…」
やりがいが大きい一方で、勤務時間が特殊な塾講師の仕事。結婚というライフステージの変化を前に、キャリアについて深く悩む方は少なくありません。
しかし、ポイントを押さえることで、結婚後も塾講師として輝き続けることは十分に可能です。
あなたに合った「理想の働き方」が見つかるはずです。
結婚後に直面する「4つの壁」とその正体
なぜ、多くの塾講師が結婚を機に働き方に悩むのでしょうか。まずは、その背景にある「壁」の正体を具体的に見ていきましょう。
- 家族との生活時間のズレ
- 体力的に厳しい長時間労働
- 産休・育休の取りづらさ
- パートナーの理解と協力
1.家族との生活時間のズレ
最大の壁は、一般的な会社員とは異なる勤務時間です。塾講師の一般的な勤務時間は14:00〜22:00。パートナーや子供との生活リズムがすれ違い、家族の時間が確保しにくいという現実があります。
時間 | 一般的な会社員 | 塾講師 |
---|---|---|
平日の夜 | 帰宅・夕食・団らん | 授業のピークタイム |
週末 | 休日 | テスト対策や講習で出勤 |
平日の夜に一緒に食事ができない、週末に休みが合わない、といった状況が続くと、コミュニケーションが減り、孤立感を覚えることもあります。
2.体力的に厳しい長時間労働
塾講師は授業以外にも、準備や保護者対応、事務作業など幅広い業務を担うため、残業が発生しやすい傾向にあります。特に生徒の受験期には、連日の授業や指導で体力的な負担が増えることも少なくありません。
結婚後は、これに加えて家事を担う必要が生じるため、仕事と家庭の両立に難しさを感じる人もいます。疲労が重なることで、心身への負担につながる可能性もあります。
3.産休・育休の取りづらさ
将来的に子どものことを考えている場合、産休・育休制度は非常に重要です。しかし、塾業界は「人」が中心の仕事。自分が休むことで、担当生徒や同僚に迷惑がかかるのではないか、と不安に感じる方が多いのが実情です。
学習塾が含まれる教育、学習支援業における育休取得率は下記のようになっており、女性が平均的な水準であるのに比べて、男性は育児休業の取得率は低くなっています。
業種 | 女性 | 男性 |
---|---|---|
教育、学習支援業 | 88.3% | 23.5% |
総数 | 86.6% | 40.5% |
4.パートナーの理解と協力
特殊な勤務時間や仕事の大変さを、パートナーに十分に理解してもらうことも、乗り越えるべき壁の一つです。特に、講習期間や受験直前といった繁忙期にはパートナーの理解は必要不可欠です。
「どうして帰りが遅いの?」「土日も仕事なの?」
といった言葉に、後ろめたさやストレスを感じることもあります。仕事と家庭を両立させるためには、パートナーの理解や家事・育児への協力が大きな支えとなります。
先輩講師に学ぶ!仕事と家庭の両立術
多くの壁がある一方で、工夫して仕事と家庭を両立させている先輩講師もたくさんいます。ここでは、今日から実践できる具体的な両立術をご紹介します。
パートナーとの家事分担ルール
家庭内での意識的なコミュニケーションとルール作りが鍵となります。
- 「見える化」で協力体制を築く
- 共有カレンダーアプリで、お互いの勤務スケジュールやゴミ出しなどのタスクを共有する。
- 「名もなき家事」をリストアップし、どちらが担当するかを明確にする。
- 「完璧」を目指さない
- 時短家電(食洗機、乾燥機付き洗濯機、ロボット掃除機など)を積極的に導入する。
- 疲れている日は無理せず、ミールキットや惣菜、外食などを活用する。
- 定期的な「家族会議」
- 月に一度、お互いの状況や不満、感謝などを話し合う時間を作る。
自由な時間が異なる塾講師という働き方だからこそ、夫婦で補い合える部分があるはずです。互いに無理をしてしまわないよう、それぞれの不満をなくしていくことが大切です。
「時短勤務」への柔軟な切り替え
出産後は、家庭の状況に応じて「時短勤務」を活用することも有効な手段です。「時短勤務」とは一日の所定労働時間を原則6時間とする措置を含むもので、これは「育児・介護休業法」で定められた労働者の権利です。
授業のコマ数を調整してもらったり、会議や事務作業の一部を免除してもらったりすることで、負担を軽減できます。権利として主張するだけでなく、事前に上司に相談し、円滑な業務調整が可能かを確認しておくことが、スムーズな移行のポイントです。
他にも育児・介護休業法において、いくつかの制度が定められているため、自身の会社が講じている制度を十分に利用していくことが、子育てと勤務の両立につながります。
出典 育児・介護休業法の概要
オンライン指導への移行という選択
近年、オンライン専門の塾や、オンライン指導部門を強化する塾が増えています。オンラインであれば、結婚後でも柔軟に働くことができ、塾講師としてのスキルをそのまま生かすことができます。
オンライン指導のメリット
- 通勤時間がゼロに:
- 時間と体力を大幅に節約できる。
- 柔軟な働き方:
- 在宅での勤務が可能になり、家事との両立がしやすくなる。
- 新しいスキルの習得:
- ICTスキルやオンラインでのコミュニケーション能力が身につく。
現在の職場で部門を異動したり、他業種へ転職したりするだけでなく、オンライン指導を主軸とする塾へ転職するのも、新しいキャリアの選択肢です。
「働きやすい塾」を見極める4つのポイント
今の職場で両立が難しいと感じたら、より働きやすい環境の塾へ転職するのも一つの解決策です。求人票を見る際に、必ずチェックしたい4つのポイントを解説します。

①産休・育休の取得実績
「制度あり」という言葉だけでなく、本当に重要なのは「実際にどれくらいの人が利用しているか」という実績です。
面接での確認ポイント
- 過去3年間で、産休・育休を取得した人は何人いるのか。
- 育休からの復職率はどのくらいか。
- 休業中の代替講師はどのように手配されているのか。
- 育児休業の取得はどのように行い、いつまでに申請する必要があるのか。
具体的な数字や運用方法を質問することで、企業のリアルな姿勢が見えてきます。
②女性管理職の割合や活躍実績
女性が長期的にキャリアを築ける職場かどうかは、女性管理職の割合が一つの指標になります。
令和6年度の雇用均等基本調査によると、教育・学習支援業の係長級以上の女性管理職の割合は23.2%です。
この数値を一つのベンチマークとして、応募先の企業が女性のキャリアアップをどれだけ支援しているかを確認しましょう。ロールモデルとなる女性社員が活躍している職場は、両立への理解も深い傾向にあります。
③柔軟な勤務形態(在宅など)
授業は対面でも、それ以外の業務はリモートワークが可能かもしれません。授業準備、会議、事務作業といった業務をリモートで行ってもよいのかという点を確認しましょう。
確認したい柔軟な制度の例
- 授業準備や事務作業のリモートワーク導入実績
- フレックスタイム制など、コアタイム以外は始業・終業時間を調整できる制度
④福利厚生や手当の充実度
給与だけでなく、福利厚生も重要な要素です。在住の地域にもよりますが、住宅手当やベビーシッター代は生活を支える重要な要素となります。条件も含めて、確認しましょう。
チェックしたい福利厚生・手当
- 家族手当・扶養手当:
- 配偶者や子どもがいる場合に支給される手当。
- 住宅手当:
- 家賃や住宅ローンの一部を補助してくれる制度。
- 独自の支援制度:
- 企業によっては、ベビーシッター代の補助や、時短勤務中の給与補填制度などを設けている場合もあります。
5. 迷ったらキャリアアドバイザーに相談!
「今の会社で頑張るべきか、転職すべきか…」一人で悩んで答えが出ない時は、外部の専門家の視点を取り入れるのがおすすめです。
経験が活きる異業種の仕事
もし塾業界を離れるとしても、あなたの経験は無駄にはなりません。
塾業界での経験が活きる異業種の仕事には下記のようなものがあります。
業種 | 業務内容 | 活かせるスキル |
---|---|---|
人材業界: キャリアアドバイザー | 求職者のキャリア形成をサポートする専門職 | 生徒指導、保護者面談などの対応力 |
IT業界: カスタマーサクセス | 顧客が製品やサービスを最大限活用できるよう支援する仕事 | 生徒指導、保護者面談などの対応力、コミュニケーション能力 |
一般企業: 研修・人事担当 | 社員に対して、研修をしたり、人事を行う | 授業構成能力、事務能力 |
異業種への転職は新たに学ぶ必要があることが多くはありますが、ワークライフバランスの解決や新たな挑戦につながります。
まずはキャリアアドバイザーに相談
転職エージェントのキャリアアドバイザーは、転職市場のプロです。
- 客観的な視点であなたの市場価値を教えてくれる。
- あなたが気づいていないキャリアの可能性を提案してくれる。
- 産休・育休の取得実績など、個人では調べにくい企業の内部情報を持っている。
「転職するか決めていない」という段階でも、無料で相談は可能です。まずはキャリアの選択肢を広げるために、話を聞いてみるだけでも価値があります。
転職活動のベストな時期とは
一般的に、中途採用の求人が増えるのは、年度替わり前の1月から3月、または下半期が始まる前の8月から9月とされています。面接だけでなく、事前準備や情報収集など多岐にわたる準備が必要となるため、綿密なスケジュールを立て、計画的に進めることが重要です。
転職活動をいつ開始するかの見極めは難しいですが、教育業界に特化したエージェントなら、業界特有の採用サイクルも熟知しています。あなたにとって最適なタイミングを、プロの視点からアドバイスしてくれます。
焦らず情報収集から始める
結婚後のキャリアは、あなたの人生にとって非常に重要な決断です。焦りは禁物。まずは「今の自分にはどんな選択肢があるのか」を知ることから始めましょう。
情報収集を通じて、今の職場で働き続けるための新しいヒントが見つかるかもしれませんし、自身の認識していなかった才能を見つけられるかもしれません。情報を得て、整理してから自身にとっての最良の選択をしていくことが大切です。
まとめ
結婚後も、塾講師としてやりがいを持って仕事を続けることは、決して不可能ではありません。大切なのは、直面するであろう「壁」を正しく理解し、事前に対策を打っておくことです。
どの道を選ぶにせよ、鍵となるのは「一人で抱え込まないこと」と「早めに情報収集を始めること」です。
この記事が、自分らしいキャリアと幸せな家庭を両立させるための、確かな一歩となることを願っています。
この記事の監修者

教育転職ドットコム 吉田
キャリアアドバイザー
詳しく見る新卒で会計コンサルティングファームに入社し内部統制構築支援や決算早期化支援プロジェクト等に携わった後、リクルートへ転職。教育領域で大学を中心とした高等教育機関の募集戦略の策定やマーケティング支援に携わる。その後学習塾を立ち上げ、創業2か月で単月黒字を達成。学習塾運営のみならず、高校大学受験のための進路指導講演会、高校入試問題の作成等、「教育」分野へ広範にわたって関わり、2022年株式会社コトブックへ参画。