塾業界はやめておけといわれる理由とは? | 就職先を選ぶときに知っておきたいこと

塾業界はやめておけ?就職先を選ぶときに知っておきたいこと

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教育転職ドットコム 田中

教育転職ドットコム 田中

代表取締役

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京都市出身。学生時代から教員の道を志すも教育実習で課題感を感じ、まずはビジネス経験を積もうと総合コンサルティングファームのABeamConsultingに入社。その後、学んだ後に求められる力を採用の領域で体感したいと株式会社リクルートに転職。人事採用領域とまなび(教育)領域で12年間、法人営業および営業責任者として従事し、まなび事業部では年間最優秀マネジャーとして表彰。その後、海外教育ベンチャーの取締役などを経て株式会社コトブックを創業。コンサルタント兼プロジェクトマネージャーとして大手学習塾やブランド大学など教育系企業のプロジェクトを多数担い、担当した案件の全てを当初計画予定以上の成功に導く。京都精華大学 非常勤講師(キャリア科目)。

この記事の目次

こんなお悩みありませんか?

  • 塾業界で働いていて、働き方に悩んでいる
  • 塾で働いているけれどキャリアプランが不安
  • 塾で働きたいけれど、やっていけるか不安

教育業界専門の
キャリアアドバイザーが担当

はじめに

「塾の先生は大変そう」「塾業界はやめたほうがいいと聞くけれど、本当はどうなの?」

──そんな疑問を持ったことはありませんか?
ネットで検索すると「やめておけ」「ブラック」といった言葉が目立ち、不安に感じる方も多いでしょう。

一方で、子どもたちの成長を間近で感じられるやりがいのある仕事であることも事実です。この記事では、塾業界が「やめておけ」と言われる理由や、働き方の違い、この仕事ならではの魅力について解説します。

塾業界は「やめておけ」と言われる6つの理由

なぜ、塾業界はネガティブなイメージを持たれがちなのでしょうか。まずは、その具体的な理由を6つのポイントから見ていきましょう。

  1. 勤務時間が夜中心になる生活リズム
  2. 「ブラック」という世間的なイメージ
  3. 授業だけじゃない!多岐にわたる業務内容
  4. 講習期間中は確かに忙しい
  5. カレンダー通りには休めない?休日の取りにくさ
  6. キャリアアップが見えにくい?昇進のしづらさ

1. 勤務時間が夜中心になる生活リズム                 

塾講師の勤務時間は生徒が学校を終えた、夕方から夜にかけてがメインです。そのあと帰宅となると就寝は24:00を回ることもあり、一般的な企業とは生活リズムが大きく異なるため、「きつい」と感じる人が多いようです。

勤務時間帯の例   13:00~22:00
メリット・朝がゆっくりできる
・平日の昼間に役所や銀行などに行きやすい          
デメリット・友人や家族と時間が合わない
・夜型の生活になるため、体調管理が難しい
・終業後のプライベートな時間が限られる

特に、日中の時間を大切にしたい方や、家族や友人との交流を重視する方にとっては、この勤務形態がネックになる可能性があります。

2. 「ブラック」という世間的なイメージ

「塾業界は忙しい」というイメージを持つ方も少なくありません。授業の準備やテストの採点、保護者対応など、授業以外の業務も多いため、結果的に労働時間が長くなることがあったのは事実です。

しかし近年は、働き方改革の流れを受けて労働環境の改善に取り組む塾が増えてきています。勤務時間の見直しや分業体制の導入など、以前と比べて働きやすい環境づくりが進んでおり、ワークライフバランスを重視した働き方も可能になっています。

3. 授業だけじゃない!多岐にわたる業務内容

「塾講師の仕事は、生徒に勉強を教えること」とイメージしている方も多いかもしれませんが、実際にはそれ以外の業務も非常に多くあります。

【塾講師の主な業務内容(授業以外)】

業務内容具体例実施率
授業準備カリキュラム作成、教材研究、小テスト作成など86.4%
生徒対応質問対応、進路相談、学習カウンセリング96.6%
保護者対応面談、カウンセリング93.2%
ミーティングや研修会指導内容の共有、研修、ルール確認81.4%
生徒募集活動新規生徒募集のチラシ配り、入塾説明会の実施81.4%

(参照 厚生労働省:https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/396

これらの業務を授業の合間や授業後に行うため、どうしても拘束時間が長くなる傾向にあります。特に、生徒一人ひとりに寄り添った指導をしようとすればするほど、業務量は増えていきます。

4. 講習期間中は確かに忙しい

塾業界には、一年の中で特に忙しい「繁忙期」が存在します。

<塾講師の1年間のスケジュール>

内容
4月新学年スタート
5月中間テスト対策
6~7月期末テスト対策、夏期講習準備
8月夏期講習
9~10月秋の模試対策
11月冬期講習準備、入試直前対応開始
12月冬期講習、進路相談増加
1~2月受験本番、授業がほぼ毎日開講される
3月卒業・進学報告、春期講習、新年度準備

講習期間や受験直前期は特別授業が多く入り、通常期よりも授業時間が増える傾向にあります。体力面でハードさを感じることもありますが、その分、生徒と密に関わり成果に直結する指導ができるため、やりがいを実感できる時期でもあります。

5. カレンダー通りには休めない?休日の取りにくさ

多くの塾では、生徒が学校に通っている平日の昼間や、日曜・祝日を休みに設定していることが多いです。しかし、前述の繁忙期や、模試の試験監督などで休日出勤が必要になるケースもあります。

また、一般的な企業がお休みであるゴールデンウィークやお盆、年末年始なども、講習期間と重なるため、長期休暇の取得は4月や9月といった周囲とは異なる時期になることが多いです。

休日の特徴
・平日休みが基本
・日曜・祝日は休みの場合が多い
・GW、お盆、年末年始は繁忙期と重なりがち
・有給休暇の取得しやすさは塾による

6. キャリアアップが見えにくい?昇進のしづらさ

塾業界のキャリアパスは、教室長やエリアマネージャーといった管理職を目指すのが一般的です。しかし、ポストの数には限りがあるため、誰もが順調に昇進できるわけではありません。

また、講師としての専門性を高めていく「プロ講師」という道もありますが、かなりの技術が必要とされてきます。

そのため、「このまま講師を続けていて、将来大丈夫だろうか?」キャリアに不安を感じてしまう人も少なくないのです。

塾による差

ここまで塾業界の厳しい側面をお伝えしてきましたが、すべての塾が同じというわけではありません。企業の規模や指導形態によって、働き方は大きく異なります。

ここでは、大手塾、中小塾、オンライン塾それぞれの特徴と、「ホワイトな塾」を見分けるためのポイントを解説します。

大手塾

全国展開しているような大手塾は、以下のような特徴があります。

メリット/デメリット特徴
メリット・経営が安定している
・福利厚生や研修制度が整っている
・業務の分業が進んでいる
・ポストが多い分キャリアアップがしやすい
デメリット・会議が多い
・裁量権が小さいことが多い
・体験授業や保護者対応など、営業的な要素を担うこともある    
・転勤の可能性がある

こんな人におすすめ:

  • 安定した環境で働きたい人
  • 未経験から塾講師に挑戦したい人
  • キャリアアップを視野に入れている人

中小塾

メリット/デメリット特徴
メリット・会議が少ない
・裁量権が大きい
・転勤の恐れがない
・アットホームな雰囲気
デメリット・大手に比べて給与水準や安定性に差がある場合がある       
・講師が運営業務を兼任することが多い
・時期によっては休暇が取りにくい
・責任範囲が広いため、負担を感じやすいこともある

こんな人におすすめ:

  • 自分の指導スタイルを確立したい人
  • 地域に貢献したいという思いが強い人
  • アットホームな職場で働きたい人

オンライン塾:新しい働き方と柔軟性

具体
メリット・在宅勤務が可能
・時間の設定も比較的自由にやりやすい
・授業以外の雑務を行う必要がない
・副業として働ける
デメリット・大手に比べて給与水準や安定性に差がある場合がある
・オンラインのため同僚との交流機会が限られる
・機器の不具合などに大きく左右される
・非対面ならではの工夫が求められる

こんな人におすすめ:

  • プライベートと仕事を両立させたい人
  • 場所に縛られずに働きたい人
  • 教えることに集中したい人

求人情報から見抜く!「ホワイトな塾」の見分け方

実際に求人を探す際に、どのような点に注意すれば「ホワイトな塾」を見つけられるのでしょうか。以下の5つのポイントをチェックしてみてください。

求人情報から見抜く!「ホワイトな塾」の見分け方

【ホワイトな塾を見分ける5つのチェックポイント】

  1. 給与体系が明確か
    • 「固定残業代(みなし残業代)」が含まれている場合、その時間と金額が明記されているか。
    • 授業時間以外の業務(事務作業など)にも給与が発生するか。
  2. 休日・休暇制度はしっかりしているか
    • 年間休日日数が明記されているか(目安は110日以上)。
    • 有給休暇の取得実績について記載があるか。
  3. 研修制度は充実しているか
    • 未経験者向けの研修プログラムがあるか。
    • スキルアップのための研修が定期的に行われているか。
  4. 労働環境への配慮が見られるか
    • 「残業月平均〇時間」など、具体的な数字が記載されているか。
    • ITツール導入による業務効率化など、働きやすさへの取り組みがあるか。
  5. 求人情報が具体的で誠実に書かれているか
    • 仕事の良い面だけでなく、大変な面についても触れられているか。
    • 社員インタビューなどで、実際に働く人の声が掲載されているか。

自身の理想とする勤務条件とこれらのポイントとの合致点を探し、それを意識して求人情報を見ることで、入社後のミスマッチを減らすことができます。


それでも塾業界で働く!4つの大きなメリットとやりがい

厳しい側面がある一方で、塾業界にはそれを上回るほどの魅力とやりがいがあります。ここでは、塾講師として働くことのメリットを4つご紹介します。

1. 生徒の成長を一番近くで感じられる「やりがい」

塾講師という仕事の最大の魅力は、なんといっても生徒の成長をダイレクトに感じられることです。

  • 「先生、わかった!」と生徒が目を輝かせた瞬間
  • 塾にいやいや来ていた生徒が積極的に勉強に取り組み始めた嬉しさ
  • 苦手科目を克服し、テストの点数が上がった時の喜び
  • 第一志望の学校に合格し、涙ながらに報告に来てくれた時の感動

これらの経験は、何物にも代えがたい大きなやりがいとなり、「この仕事をしていて本当に良かった」と心から思える瞬間です。生徒の人生の重要な局面に関わり、その成長をサポートできることは、この仕事ならではの醍醐味と言えるでしょう。

2. 同じ目標を持つ仲間との「一体感」

塾という職場は、生徒の成績アップや志望校合格という共通の目標に向かって、社員一丸となって取り組む環境です。

  • 難しい問題の解法について、講師同士で議論する
  • 生徒の情報を共有し、最適な指導法を一緒に考える
  • 合格発表を聞いて、生徒とも一緒にみんなで喜びを分かち合う

同じ目標を持つ仲間と協力し、切磋琢磨しながら仕事に取り組むことで、強い一体感や連帯感が生まれます。こうした社員同士の仲の良さも、塾業界の魅力の一つです。

3. 論理的に、分かりやすく「伝える力」の向上

塾講師の仕事は、複雑な学習内容を、生徒が理解できるように分かりやすく説明することです。

「なぜ、そうなるのか?」 「どうすれば、もっと簡単に解けるのか?」

常にこのように考えながら授業を行うことで、物事を論理的に整理し、相手に分かりやすく伝える能力が自然と身についていきます。この「伝える力」は、ビジネスの世界において非常に重要なスキルであり、どんな業界でも通用するポータブルスキルと言えるでしょう。

4. 生徒・保護者との対話で磨かれる「コミュニケーション能力」

塾講師は、様々な個性を持つ生徒や、その保護者と日々接します。

  • なかなか心を開いてくれない生徒との信頼関係の構築
  • 学習状況の報告や進路相談など、保護者との円滑な連携

多様な立場の人と対話する中で、相手の意図を正確に汲み取り、自分の考えを的確に伝える高度なコミュニケーション能力が磨かれます。これは、社会人として生きていく上で、非常に大きな財産となるはずです。


塾業界に向いている人の3つのポイント

ここまで読んで、「自分は塾業界に向いているのだろうか?」と疑問を持ち始めた方もいるかもしれません。最後に、塾講師として活躍できる人の特徴を3つのポイントにまとめました。

  1. 「教えること」「子ども」が心から好き
  2. 「夜型勤務」が苦にならない
  3. 相手の立場に立って考えられる「コミュニケーション能力」

1. 「教えること」「子ども」が心から好き

これは最も重要な資質です。人に教えて、その人が理解したことを一緒に喜ぶことができる。生徒のことを思って行動したいと思える。そういった気持ちがなければ、この仕事を長く続けることは難しいでしょう。

このような気持ちを持っている人は、塾講師という仕事に大きなやりがいを感じられるはずです。

2. 「夜型勤務」が苦にならない

塾業界の勤務時間は、どうしても夜が中心になります。通常の職業とは違うため、どうしても夜型勤務が合わないという人もいると思います。

このようなライフスタイルの人にとっては、夜型勤務はむしろメリットに感じられるかもしれません。塾によって活動時間帯は異なる場合もあるため、自分の生活リズムと照らし合わせて、無理なく働ける職場を探しましょう。

3. 相手の立場に立って考えられる「コミュニケーション能力」

先述の通り、授業内外において塾講師にはコミュニケーション能力が求められます。具体的には、以下のような能力が不可欠です。

これらの能力は、生徒や保護者との信頼関係を築く上で欠かせません。人と話すのが得意な方には、塾講師は適した職業と言えるでしょう。


まとめ:情報を正しく理解し、あなたに合ったキャリア選択を

今回は、「塾業界はやめておけ」と言われる理由から、その実情、そして仕事の魅力まで、幅広く解説してきました。

「塾業界はやめておけ」という言葉は、あくまで一面的な意見に過ぎません。塾業界は他の職業と異なる点も多いため、マイナスなイメージしか持たれていないこともありますが、様々なメリット、やりがいがある仕事であり、塾業界の中でも働き方に違いがあります。

大切なのは、自分自身の価値観や適性と照らし合わせて判断することです。自分に合った勤務条件、目標を掲げる企業を探してみてください。

この記事の監修者

教育転職ドットコム 田中

教育転職ドットコム 田中

代表取締役

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京都市出身。学生時代から教員の道を志すも教育実習で課題感を感じ、まずはビジネス経験を積もうと総合コンサルティングファームのABeamConsultingに入社。その後、学んだ後に求められる力を採用の領域で体感したいと株式会社リクルートに転職。人事採用領域とまなび(教育)領域で12年間、法人営業および営業責任者として従事し、まなび事業部では年間最優秀マネジャーとして表彰。その後、海外教育ベンチャーの取締役などを経て株式会社コトブックを創業。コンサルタント兼プロジェクトマネージャーとして大手学習塾やブランド大学など教育系企業のプロジェクトを多数担い、担当した案件の全てを当初計画予定以上の成功に導く。京都精華大学 非常勤講師(キャリア科目)。

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