塾講師がブラックといわれる理由は?その理由と実態を徹底解説!

この記事の監修者

教育転職ドットコム 田中
代表取締役
詳しく見る京都市出身。学生時代から教員の道を志すも教育実習で課題感を感じ、まずはビジネス経験を積もうと総合コンサルティングファームのABeamConsultingに入社。その後、学んだ後に求められる力を採用の領域で体感したいと株式会社リクルートに転職。人事採用領域とまなび(教育)領域で12年間、法人営業および営業責任者として従事し、まなび事業部では年間最優秀マネジャーとして表彰。その後、海外教育ベンチャーの取締役などを経て株式会社コトブックを創業。コンサルタント兼プロジェクトマネージャーとして大手学習塾やブランド大学など教育系企業のプロジェクトを多数担い、担当した案件の全てを当初計画予定以上の成功に導く。京都精華大学 非常勤講師(キャリア科目)。
一般に学生の授業が終わる夜に働くイメージが強い塾講師は、ブラックであるという印象をもつ人も多いのではないでしょうか。果たして本当に塾講師はブラックなのでしょうか?
本記事では、塾講師がブラックといわれている理由から、実際に塾業界に入る際の注意点まで詳しく解説します。
塾講師はなぜブラックといわれるのか
塾講師がブラックといわれている背景には、下記のようなものがあります。
- 授業だけではなく、業務内容が幅広い
- 給与が業務量に合わない
- 勤務時間の融通が利かない
- 残業が多く、生活リズムが崩される
- 「生徒の成長のため」というやりがい搾取的な部分がある
- 保護者対応やクレームは精神的にすり減る
授業だけではなく、業務内容が幅広い
塾講師と聞いたときにどのような姿を思い浮かべるでしょうか。
生徒の前に立って授業をしている姿や、生徒と面談をしている姿など、生徒と接している姿を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
もちろん塾講師として教壇に立ったり生徒とコミニュケーションを取る業務は大切になってきます。
しかし、実際はそれらの業務以外にも多岐にわたります。
授業準備や保護者対応、事務作業・営業活動など…こうした授業以外の業務は外部から見えにくいため、理解を得にくいのが現実です。
授業をやってみたいと思い塾講師に就職した人ほど業務内容の幅広さにギャップを感じるかもしれません。
給与が業務量に合わない
給与が業務量に合わないといわれる傾向にあります。
正社員の塾講師は、授業だけでなく、授業準備や保護者対応、生徒面談、進路相談、会議対応、アルバイト講師への指導など業務が多岐にわたります。
また、夏期講習や受験シーズンなどの繁忙期は残業が増えることもあり、その責任の重さや業務のボリュームに対して給与が見合っていないと感じる人も少なくありません。
実際、2025年5月には某大手予備校で給与改善を求めるストライキが起きたことからも、この問題の深刻さがうかがえます。
参考:産経新聞『河合塾講師が異例のストライキ 物理の授業で15分間、授業1分35円の賃上げ求め』2025年5月21
勤務時間の融通が利かない
以下に塾講師の1日のタイムスケジュール例を示します。
時間 | 業務内容 |
---|---|
14時 | 出勤 |
14-15時 | 授業作成・教材作成・テスト採点・ミーティング |
16-21時 | 授業 |
21-22時 | 生徒の対応(質問など) |
22-23時 | 次の日の授業準備・事務作業 |
23時 | 退勤 |
塾講師の1日は、生徒の学校が終わる時間に合わせ昼過ぎから始まります。
上で示したタイムスケジュールは通常期のものであり、繁忙期である夏期講習や冬期講習の時期や、受験期には早朝勤務や休日出勤が発生する場合もあります。
1日単位で言うと周囲の人が自由時間を得ている夕方~夜、いわゆるアフター5は仕事をすることになり、年間を通しても生徒の受験スケジュールに合わせることになるため、プライベートの予定の方を調整しないといけません。
残業が多く、生活リズムが崩される
表向きの勤務時間は塾講師以外の仕事とそれほど変わらないように見えます。
しかし、実際には授業前の午前の時間を使った会議や、生徒の保護者からの電話対応などがあり、見えない残業時間が積み重なります。
特に新人講師や責任あるポジションに就いている場合、これらの業務量が多くなり、慢性的なサービス残業状態に陥ることも珍しくありません。
時間外労働が常態化している塾では、講師の疲弊による離職率の高さが問題となっています。
また、勤務時間は14時から23時頃までが一般的で、帰宅は深夜近くになります。
帰宅後から食事や翌日の授業準備をして就寝するとなると、睡眠時間が削られたり、生活習慣が深夜型に偏ったりします。
このような慢性的な睡眠不足や生活習慣の乱れは健康に悪影響を及ぼすだけでなく、業務効率やモチベーションにも直結します。
また、時期によっては休日出勤もありうるため、家族や友人と予定を合わせるのが難しく、ワークライフバランスを確保しづらい職業と言えるでしょう。
「生徒の成長のため」というやりがい搾取的な部分がある
「生徒の夢を叶えたい」「成績を伸ばしてあげたい」という純粋な気持ちが、時に過度な自己犠牲を生み出してしまうことがあります。
上司や運営側からの「子どもたちのために頑張ろう」という言葉が、暗に長時間労働や休日出勤を強要する空気を生んでしまう場合もあります。これが教育業界の“やりがい搾取”と呼ばれる構造につながっています。
このような職場環境では、教育へ理想を持った講師ほど心身をすり減らしてしまうことになります。
保護者対応やクレームは精神的にすり減る
塾講師は「サービス提供者」としての側面が強く、保護者との関係性は重要です。
また塾は「成績を伸ばす場所」としてのイメージが強いことから、保護者からのクレームが絶えません。
「うちの子の成績が伸びないのは塾のせいだ」「先生の教え方が合わない」といった保護者からの厳しい指摘が精神的なストレスとなります。
こうしたプレッシャーが講師の心身に大きな影響を与えることも少なくありません。
良いことももちろんある!塾講師のメリットと向いている人の特徴

ここまで塾講師がブラックといわれる理由を解説してきましたが、塾講師には、もちろんやりがいや魅力も数多く存在します。主なメリットと、塾講師に向いている人の特徴を紹介します。
塾講師のメリット:生徒の成長を一緒に喜ぶ瞬間は格別
塾講師の魅力として真っ先に挙げられるのが、生徒の成長を間近で感じられることです。
生徒が苦手教科を克服した時、志望校に合格した時、「勉強が楽しくなった」と言われたなどなど。
一人の人間の成長に向き合うことは奥深く、他の仕事ではなかなか得られない感動があります。生徒の方も、自分の成長に向き合ってくれた講師のことは心から慕うでしょう。
生徒にとっては塾講師との関わりは「あの先生がいたら、人生変わった」というような印象深いできごとにもなりえます。
これらの出来事がいままでの仕事の大変さを吹き飛ばしてくれます。
誰かの人生に向き合うことのできる、教育という仕事の醍醐味を、日々の中で実感できるのは塾講師ならではの特権です。
塾講師のメリット:幅広い汎用的なスキルが身につく
授業運営を通じて培われる「話す力」「伝える力」はプレゼンテーション能力に直結します。
また保護者対応で鍛えられる「傾聴力」「説得力」はあらゆる営業シーンで、トラブル対応の経験はマネジメント能力や冷静な判断力として、それぞれ活かされます。
塾講師としての経験は、教育現場にとどまらず、ビジネスシーンでも幅広く活かすことができます。
以下に、具体的な業務とそこで培われるスキル、それがどのように他業界で応用できるかをまとめました。
経験内容 | 鍛えられる力 | 転職後に活かせるシーン(例) |
---|---|---|
授業運営 | 話す力・伝える力 | プレゼンテーション、商談、提案 |
保護者対応 | 傾聴力・説得力 | 顧客対応、営業、交渉 |
トラブル対応 | マネジメント能力・冷静な判断力 | クレーム対応、プロジェクト管理 |
このように、塾講師で得られるスキルは他業種でも強みとなるものばかりです。
自身の経験をどのように活かせるかを整理しておくことで、転職活動でも大きな武器となるでしょう。
塾講師のメリット:労働環境が整っている塾ももちろんある
ブラックと言われやすい塾ですが、労働環境が整っている塾もあります。
特に教室運営や事務業務を分業している塾では、講師が授業に集中できるように体制が整っているため、残業も最小限に抑えられる傾向があります。また、土日休みが叶う塾や、夏期講習や冬期講習後に長期のリフレッシュ休暇をとれる塾も存在します。
塾講師に向いている人:教えるのが好きな人(≠得意な人)
塾講師の多様な業務について紹介してきましたが、主となる業務はやはり授業です。
そのため心から教えるのが好きな人は塾講師に向いているといえます。必ずしも「得意」である必要はありません。「好き」という気持ちがあれば自然と授業スキルは向上していきます。
塾講師に向いている人:コミュニケーション能力が高い人
塾講師は子供を相手にすることになります。
子供に寄り添い、一人一人に適した対応を取るためには、高いコミュニケーション能力が必要です。
そのため、生徒と会話し、信頼関係を築ける人は塾講師に向いているといえるでしょう。
塾講師に向いている人:不規則な生活習慣に対応できる人
労働環境が改善されてきているとはいえ、塾講師は塾講師である以上、一般的な会社員よりも勤務時間が夜間中心になります。
そのため、もともと朝が苦手で夜型の生活を好む人や、不規則な生活リズムにも対応できる人は塾講師にうってつけの職業でしょう。
忍耐力がある人
塾講師は、授業を通して生徒一人ひとりの理解度やペースに寄り添いながら指導していく必要があります。
すぐに成果が出ないこともありますが、生徒一人ひとりとじっくり向き合いながら、焦らず、着実に一歩ずつサポートを続けられる人は、生徒や保護者からも信頼されやすく、向いているといえるでしょう。
責任感が強い人
生徒の人生にとって大切な受験という時期を一番近くでサポートするという責任を持って取り組める人は、塾講師の仕事にやりがいを感じやすいです。
テストや模試などで生徒がなかなか結果を出せないときも、その原因を一緒に考えて工夫しながら前に進める人は、生徒にとって心強い存在になります。
塾業界に転職する際、確認するべきこと10選

実際に塾業界に就職・転職する際に事前に必ず確かめておきたいことについてご紹介します。
実績などでプレッシャーをかけられないか、ノルマがあるか
塾講師は、生徒数の増加、退塾の防止、合格率の向上などの目標を課される場合があります。
ノルマ未達成の場合、厳しい評価や待遇変化といったプレッシャーが生じることも。
過度な成果主義は、教える楽しさや生徒の成長へ寄り添う気持ちより数字への焦りを生み、講師のモチベーションを低下させる可能性があります。入社前に評価制度や塾の方針をよく確認することが重要です。
辞める時の制度
塾業界では慢性的な人手不足が問題となっているため、時には退職希望者がスムーズに辞められない状況が発生することもあります。
面接や入社前に「退職時の申し出は何ヶ月前が必要か」「引き止めや契約期間の制限があるか」など、退職に関するルールを事前に確認しておくと良いでしょう。
トラブルを避けるためにも、労働契約書にはしっかりと目を通し、不明点は入社前にクリアにしておきましょう。
未経験者への研修制度が充実しているか
未経験から塾講師を目指す場合、充実した研修制度は非常に重要です。
生徒対応、授業の進め方、カリキュラム理解など、基礎からしっかり学べる環境があるかは、入社後の成長スピードや定着に大きく影響します。
研修期間や内容、OJTの有無、未経験から中途入社して現在活躍している講師はいるかなどを具体的に確認し、安心して働き始められるサポート体制があるかを見極めましょう。
教室の雰囲気と離職率
教室の雰囲気は求人情報からは分かりづらいですよね。
そのため実際に教室を見学させてもらったり、面接官の態度や社員の表情から感じ取ったりするのが有効です。
あわせて、その教室や企業全体の離職率も調べておくとよいでしょう。離職率が高い場合、過重労働やパワハラ、人間関係の問題が潜んでいる可能性もあります。口コミサイトを活用して、リアルな内部情報をチェックしましょう。
また、教育業界に強い人材エージェントを利用して、求人内容やその企業の実態について確認するのもひとつの方法です。
人材エージェントは直接企業とやりとりしているため、求人票にはないリアルな情報を持っていることがあります。
キャリアパスが多様にある会社か
塾講師としての経験を積んだあと、教室長やエリアマネージャーなどへのキャリアアップや、また本部でのカリキュラム開発や人事といった、さまざまなキャリアパスが用意されている企業があります。こうした制度が整っていると、「将来はこうなりたい」という目標に向けてキャリアを描きやすくなります。
一方で、ずっと講師業のみで役職が与えられない環境が続いてしまう場合、スキルアップの実感が得られにくく、モチベーションが下がってしまうことも。
自分がどのような成長を望むのか、そのための道が用意されているかを見極める必要があります。
夏季・冬季講習期間中の勤務体系
生徒たちの長期休暇中は塾も繁忙期でありこの期間は1日中勤務となったり、休日を返上して授業に臨むといったこともあります。
講習期間中のスケジュールの組み方や労働時間、代休の有無、繁忙期手当の支給があるかなどを確認しましょう。
「講習中はハードですけど、他の時期は緩やかですよ」といった言葉を鵜呑みにせず、具体的な勤務時間の実績なども聞いておくことが大切です。
生徒の合格実績を調べる
塾の力量を測る大きな指標である合格実績ですが、その裏にある運営方針も確認しましょう。
例えば、数字を追求するあまり、無理な進路指導や偏差値至上主義に陥っていないか、合格実績を出すことに過度なプレッシャーがかかっていないかなど、塾の教育理念が自身の価値観と合致するかどうかを見極めることが重要です。
企業のウェブサイトだけでなく、説明会や実際に働く社員の声からも、その方針を確認しましょう。
勤務している塾講師の「本音」を調べる
求人情報や会社の説明会だけでは知り得ない現場の声というのは存在します。
実際に働いていた(または働いている)講師のリアルな声を聞くことは、求人情報だけではわからない“本音”に近づき塾の質や雰囲気を知る上での有効な手段です。
口コミサイトやSNS、YouTubeでの体験談動画なども参考になります。もちろん、個人の感じ方には差があるので、評価が極端な場合は注意が必要です。ですが、複数の声を集めて比較すれば、信頼性の高い情報が見えてきます。
また、転職エージェントを通じて得られる情報も見逃せません。
実際に塾へ転職した人たちと継続的にやり取りしているため、入社後のリアルな状況を把握しているケースもあります。
保護者の口コミを調べる
保護者の視点から見た塾の評価も非常に重要です。保護者は教室の雰囲気や講師の対応、教務力を注意深く見ています。
口コミの中には、「電話の対応が丁寧だった」「急な相談にも親身に乗ってくれた」など、講師として求められる姿勢の参考になる内容も多くあります。
逆に、トラブルが多かったり不信感を持たれていたりする塾は、講師への過剰な負担や制度の不備がある可能性も。
口コミ掲示板などを活用して確認してみましょう。塾の対応や信頼性は、保護者の口コミにもよく表れます。複数の情報源を比較し、冷静に判断することが大切です。
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教育転職ドットコム 田中
代表取締役
詳しく見る京都市出身。学生時代から教員の道を志すも教育実習で課題感を感じ、まずはビジネス経験を積もうと総合コンサルティングファームのABeamConsultingに入社。その後、学んだ後に求められる力を採用の領域で体感したいと株式会社リクルートに転職。人事採用領域とまなび(教育)領域で12年間、法人営業および営業責任者として従事し、まなび事業部では年間最優秀マネジャーとして表彰。その後、海外教育ベンチャーの取締役などを経て株式会社コトブックを創業。コンサルタント兼プロジェクトマネージャーとして大手学習塾やブランド大学など教育系企業のプロジェクトを多数担い、担当した案件の全てを当初計画予定以上の成功に導く。京都精華大学 非常勤講師(キャリア科目)。